8.会社法【設立】④
こんばんは、marginal62です。
今回で会社法の設立分野のレジュメ化をいったん終えたいと思います。
(意外と長かった、、)
次回は、設立の分野に関する論点についてみていこうと考えてます。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
4 違法な設立・会社の不成立
⑴会社の不成立
会社の不成立とは、会社の設立が途中で挫折し、設立の登記まで至らなかった場合
をいう。
この場合、発起人は連帯して株式会社の設立に関してした行為について責任を負う
(無過失責任。56)。
⑵会社設立の無効
設立無効の訴えは設立登記から2年以内に(828Ⅰ①)、株主等(同Ⅱ①)のみが提起可
能(会社債権者は提訴権者に含まれていない。→債権者保護は53Ⅱで。)。
設立無効の判決が確定すると、その効力は第三者に対し(対世効)、将来に向かって
生じる(将来効)。
設立無効の訴えで、原告敗訴の場合、判決の効力は当事者間にしか及ばない(民事訴
訟法115Ⅰ)。
⑶無効事由
設立手続に重大な瑕疵がある場合。
EX.①定款の絶対的記載事項が欠けていたなど重大な瑕疵の存在
②設立時発行株式を1株も引き受けない発起人がいる場合
③公証人による定款の認証がない場合
④株式発行事項につき発起人全員の同意(32)がない場合
⑤設立に際して出資される財産の価格の最低限として定款に定められた金額
(27Ⅳ)に相当する出資がなされていない場合
⑥募集設立において創立総会が適法に開催されていない場合
⑦設立登記が無資格者の申請に基づくなどの理由で無効である場合
など
⑷会社の不存在
会社の不存在とは、会社の設立手続の瑕疵が甚だしく、そのことが外観上も明らか
な場合をいう。(狭く限られている)
5 設立に関する責任
設立に関する違法行為や不正行為につき、会社法は発起人等に罰則を定め、過料に
よる抑止を図っている。
⑴財産価格の填補責任
現物出資・財産引受けの、会社設立時を基準とする目的財産の価格が 定款に定め
た価格に著しく不足するとき、発起人・設立時取締役は会社に対して、連帯して、
その不足額を支払う責任を負う(不足額支払義務。52Ⅰ)。
ただし、発起設立の場合、①検査役の調査を得たとき、②当該発起人・設立時取締
役が無過失を証明したときは、これらの者は免責となる(同Ⅱ)。
募集設立の場合、設立時募集株式の引受人は自衛能力が十分でないため、②による
免責は認められない(103Ⅰ)。
⑵仮装の出資履行についての責任
株式匹人が出資の履行を仮装した場合、会社に対し所定の額の金銭を支払う義務を
負う(52の2Ⅱ・102のⅠ)。
出資の履行の仮装に関与した発起人も同額の金銭の支払い義務を負うが、注意を怠
らなかったことを証明すれば免責(52の2Ⅱ・103Ⅱ)。
両者の責任は、連帯責任。
⑶会社・第三者に対する責任
発起人・設立時取締役・設立時監査役は、その任務の懈怠から会社に生じた損害を
賠償する責任を負う(53Ⅰ)。
責任を免除するには、総株主の同意を要する(55)。
また、職務を行うについて悪意・重過失により第三者に生じた損害を賠償する責任
を負う(53Ⅱ)。(会社成立後の役員等が会社・第三者に負う賠償責任(423・429)に相
当)
⑷擬似発起人の責任
擬似発起人とは、募集設立において募集の広告その他募集に関する書面に創立委員
などとして自己の氏名及び会社の設立を賛助する旨を記載することを承諾した者を
いう。
この者は発起人ではないが、発起人とみなして会社法52~56・103ⅠⅡの責任を負
う(103Ⅳ)。
以上で、一通り設立分野のレジュメ化を終えました。
【次回】
会社法【設立】論点
7.会社法【設立】③
こんばんは、marginal62です。
今回は、会社法の設立の第三弾です。
ではさっそく。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
3 設立中の法律関係
⑴設立中の会社
設立中の会社の登記前はまだ権利能力を有しないため、発起人が会社の設立の過
程で取得し又は負担した権利義務は形式的には発起人に帰属し、会社が成立すれ
ば、発起人の権限内で行われた行為の効果はそのまま会社に帰属する。
権利能力なき社団である設立中の会社と成立後の会社が同一であるとする考え(同一
性説)から、発起人が会社設立のために取得し負担した権利義務は実質的には設立中
の会社に帰属しており、会社が成立すればそれらは会社に帰属する。
⑵発起人の権限
発起人が設立中の会社のためになす可能性のある行為は、①設立を直接の目的とす
る行為、②設立のために必要な行為、③財産引受け(または開業準備行為)、④事業
行為に大別される。
<①について>
①について発起人に権限があることに争いなし。
①→EX.定款作成、株式の引受け・払込みに関する行為、創立総会の招集など
<②について>
B→A社発起人。C→公証人。
認証手数料未払い。(赤✕)
CはA社に認証手数料を請求可能か?
②は定款認証手数料・印紙税、払込取扱機関に支払う手数料・報酬、検査役の報
酬、設立登記の登録免許税と、その他の設立費用に区別される。
前者は、条文上(28④括弧書など)明らか。
それ以外の設立のために必要な行為(設立費用)は、定款にその額の記載を要す
る。総額の(上限額)を定款に記載し、検査役の調査(33)を受けることが必要。
判例は設立費用につき、定款に記載された額の限度内において、発起人のした取引
の効果は成立後の会社に帰属し、相手方は会社に対してのみ支払を請求できるとす
る(発起人には請求できない。)。
<定款の設立費用の額の記載より実際の支出費用が多い場合の処理>
⇒A説ー判例を支持する学説
B説ー判例に批判的な学説
詳しくは割愛。
<③について>
DはA社の成立を条件に、成立後のA社が使用する予定の建物
の売買契約を締結。
DはA社に代金請求可能か?(財産引受け)
EはA社の成立を条件に、成立後のA社が使用する予定のマン
ション一室を賃貸する契約を締結。
EはA社に賃料請求できるか?(開業準備行為)
③財産引受けとは、会社の成立後に特定の財産を譲り受ける契約をいう。
これを行うには、財産の種類ごとにその価格・譲受人の氏名を定款に記載すること
が必要であり(28②)、原則として検査役調査(33)か価格の相当性につき弁護士等の
証明が必要。
定款に記載のない財産引受けは無効である(28柱書)。
<会社成立後に会社が追認できるか?>
⇒否定(判例)
対し、学説は会社に有利な取引であれば会社成立後の追認を認めることのほうが
会社の利益になり、会社の財産的基礎が害されないとの理由で、追認を肯定する
立場もある。
<取引後相当期間経過後に会社が無効主張できるか?>
⇒定款記載を欠く財産引受けを無効とした趣旨は、広く株主・会社債権者等の会社
の利害関係人を保護するものである。よって、本件譲受けは何人との関係におい
ても常に無効であり、会社が追認したとしても有効となるものではない。(判例)
会社は特段の事情がない限りいつでも無効主張できる。
しかし、特段の事情(契約後相当期間経過等)があれば、信義則に反し会社の無効
主張は許されない。
いわゆる開業準備行為とは、会社法に定めはなく、「会社が事業を始める準備とし
て行う行為」「会社が成立後すぐ事業を行えるように、土地・建物等を取得した
り、原材料の仕入れや製品の販売ルートを確立しておくなどの行為」をいう。
<開業準備行為につき、財産引受けに関する規定を類推適用すべきか?>
⇒財産引受けに関する法28・33をそれ以外の開業準備行為に類推適用することを
しない。(判例)
<④について>
B→A社発起人。F→旅行代理店会社。
BはA社成立前にFからチケットを購入。
FはA社に代金請求できるか?
④が成立後の会社に帰属しないことに争いなし。
社労士試験に向けて
買ってみました。
marginal62です。
私の学校にみえていた社会保険労務士の先生のお話は、普通に生活している人では聞けないものもあり、非常に興味深いもので、社労士の魅力をなんとなくですが感じたのを覚えております。
最近、具体的に目標となるものがなかったので、以前から気になっていた社会保険労務士の試験に挑戦してみようと思い、このテキストを買ってみました。(もちろん、これだけで合格するとは思ってませんよ?笑)全ページカラーで、難しそうな内容を簡潔に説明してくれております。労働法は集団及び個別双方学習したのでスッと頭に入ってきますが、社会保険分野は数字が出てくると、、、笑
しかし、素敵な資格であることは間違いないので、気を引き閉めて学習していきたいと思います。
資格試験の掟は、一発合格!
とはいえ、時間が限られていますので、効率よく学習を進めていけるように少し計画を立てます。
社会保険関係がメインになりそうです。
来年の試験に合格することを目標に。
今日からスタートです。
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アウトレットでお買い物
先日の北海道行きが急遽なくなったため、アウトレットへ買い物に出掛けました、marginal62です。
今回は日常系ブログを。
日頃はあまりお金を使わないのですが、安くなるとついつい買ってしまいますね、、
私も、今回の買い物で、
・ニット帽
・ズボン2着
・ナイキ上下セット(名前がわかりません。動きやすい感じの
やつです笑)
・ベルト
を購入しました。
皆さんは、もっと買われるのかな、
平日ということもあり、人が少なくゆっくりとまわることができました。
自宅まで一時間もあれば帰れる距離ですが、時間がありましたのであえて一泊して帰ることにしました笑
久しぶりにゆっくりと過ごせてリフレッシュできました。
次は、ダウンを買いに出掛ける予定です。
(季節的にもう少し先かな)
では。
6.会社法【設立】②
こんばんは、marginal62です。
久々の法律系記事の投稿です。(結局日付が変わってしまいました。)
今回は、前回の続き、会社法設立の募集設立の手続からです。
では、さっそく。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
2 設立手続
⑵募集設立
募集設立とは、発起人は設立時発行株式の一部を引き受け、残りについて発起人以
外の者による株式引き受けを募集する方法により行われる設立方法をいう(実務で
は稀にしか利用されない。)。
募集とは、株式の取得の申込みを勧誘することをいう(実務では、縁故者のみに勧
誘を行うことが一般。)。
設立時募集株式とは、募集に応じて設立時発行株式の引受けの申込みをした者に対
して割り当てられる設立時株式のことをいう。
発起人は、申込者の中から設立時募集株式の割当てを受ける者を定め、その者に割
り当てる設立時募集株式の数を定め、申込者に通知する(60)。
申込みと割当てにより設立時募集株式の引受けが確定する(62)。
(一連の手続は、会社成立後の新株発行とほぼ同様。)
①出資の履行
設立時募集株式の引受人は、発起人が定めた払込期日又は払込期間中に、引き受
けた株式につき全額の払込みをしなければならない。
払込みは、発起人の定めた払込取扱機関の払込取扱場所においてしなければなら
ない(63Ⅰ)。
引受人が払込期日(払込期間内)に当該払込みをしないときは、失権手続を得ずに
当然に払込みにより募集株式の株主となる権利(権利株)を失う(63Ⅲ)。
<権利株とは?>
⇒出資の履行をすることによって株主となる権利。
現物出資者が負う支払責任を履行できる資力の有無が不明では困るため、現物出
資は発起人のみ行うことができる。
払込取扱機関は払込金の保管証明の義務を負う(64)。
②創立総会
創立総会とは、設立時株主(出資の履行をした発起人及び払込を行った設立
時募集株式の引受人)の総会をいう。
発起人は、遅滞なく創立総会を招集しなければならない(65Ⅰ)。必要があれ
ば、臨時創立総会を招集することもできる(同Ⅱ)。
<権限は?>
⇒会社の設立に関する事項に限られる(66)。
発起人が定めた目的事項に限り決議できるが、例外として、定款の変更及
び会社設立の廃止については、議題として定められていなくても決議可能であ
る(73Ⅳ)。
【次回】
3から。
記事が遅れております(挨拶とTwitter)
深夜の投稿です。こんばんは、marginal62です。
最近、なかなか時間が取れず、法律系の記事が滞っております。
と言いますのも、喉に病気が見つかり、日によって体調が左右されている現状があります。
入院を勧められましたがなかなか難しいですよね。
先生には無理を言って薬と通院での治療にしていただきました。
何事にも言えることですが、やはり健康であることが物事の基礎をなしますね。体調が優れないと仕事も勉強もできませんし、、
これからしだいに秋の気候へと変化していくと思いますが、季節の変わり目はさらに気を付けないといけませんね。(私は秋が一番好きです。)
できれば、1日1投稿を考えていますがその他の予定との関係でできない場合もあるかと思います。(今のところできてないことの方が多いですが、、)
できる限り、毎日少しでも勉強し投稿していこうと思いますので、読んでいただけると非常に嬉しく思います。
Twitter(@marginal62_blog)で、投稿状況や日々の呟きをしております。
フォローしていただけると幸いです。
(フォローして頂いた方、ありがとうございます。
私もブログや呟き等拝見しております。)
今後とも本ブログを宜しくお願い致します。
北海道地震
北海道で地震がありましたね。
亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
怪我をされた方もたくさんいらっしゃって、大きな被害が出ていますね。
台風と相まって土砂崩れなどの被害に繋がったのでしょうか。
いずれにせよ、自然災害は予測困難で、被害を防ぐのは難しいようです。
今は、ソーラーパネルを使用した発電機など自然災害に備えたアイテムが豊富ですので、もしものために一台購入しておくと安心です。
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5.会社法【設立】①
こんにちは、marginal62です。
今回は、会社法(REGAL QUEST会社法)から設立の分野をレジュメ化です。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
1 総説
<株式会社設立の過程>
⇒定款の作成・認証(26・30Ⅰ)→株式発行事項の決定(32)→株式の引受け(25)→出資
の履行(34)→設立時役員等の選任(38)→設立経過の調査(33・46)→設立登記(911)→
会社成立(49)
上の流れは株式会社の設立の流れを簡単に表したものです(発起設立ベース)。
株式会社の設立は、実体の形成+法人格の付与(取得)からなる。法人格の付与につき
準則主義(法定の手続を得れば、国から法人格が付与される。)がとられている。
⑴発起人
発起人とは、発起人として定款に署名した者(27⑤・26Ⅰ)をいう。たとえ発起人ら
しい行動をしていた(擬似発起人)としても、定款に住所・氏名を記載して署名しな
かった者は発起人とはならない(大判明治41.1.29)。形式的に判断するのである。し
かし、擬似発起人は、募集設立において発起人と同様の責任を負う(103Ⅳ)こととさ
れている。
発起人は、設立を企画し設立事務を行うとともに、出資を行い会社設立時に株主と
なる(発起人は、少なくとも1株は引き受けなければならない)。発起人の資格に制
限はなく、法人でもなることができる。
⑵発起設立・募集設立
発起設立とは、会社設立時に発行される株式の全部を発起人が引き受ける方法
(25Ⅰ①)により行われる設立方法をいう。
募集設立とは、発起人は会社設立時に発行される株式の一部だけを引き受け、残部
は発起人以外の者による引き受けを募集する方法(25Ⅰ②)により行われる設立方法
をいう(実務ではほとんど行われず、発起設立が一般的。)。
2 設立の手続
⑴発起設立
①定款の作成・認証
<定款とは?>
⇒実質的意義の定款→会社の組織と活動に関する根本規則。
形式的意義の定款→そのような規則を記載した書面又は電磁的記録。
株式会社設立の際には、定款を作成し、その全員が定款に署名又は記名押印する
ことが必要である(26Ⅰ)。
<定款の記載事項の種類>
⇒絶対的記載事項→必ず記載しなければならない事項。欠くと、無効となる。
相対的記載事項→必ず記載することを要しないが、定款で定めておかなければ
その事項について効力が認められない事項。
任意的記載事項→定款に記載せず、株主総会決議・取締役会により制定する規
則等により定めても効力は生じるが、事項の明確化を図る目
的で記載される事項。
定款は、その内容を明確にして後日の紛争を防止するため、公証人の認証を受け
なければならない(30Ⅰ)。認証を受ける対象になる定款を、原始定款といい、変
更することが可能である。定款変更の際は認証は必要ない。
絶対的記載事項は、①会社の目的、②商号、③本店所在地、④設立に際して出資
される財産の価格又はその最低額、⑤発起人の氏名又は名称及び住所(27)、⑥発
行可能株式総数(37)である。①目的とは、会社の営む事業をいう。②商号とは、
会社の名称をいう(6Ⅰ)。⑥発行可能株式総数とは、会社が発行することのできる
株式の総数をいう。
28条各号が定める事項(変態設立事項)は、会社の財産形成を危うくする危険があ
るため、定款に所定の事項を記載させ、検査役の調査を受けさせることが法で要
求されている。
②株式発行事項の決定及び株式の引受け
設立の際に発行される株式を設立時発行株式という(25Ⅰ①)。これに関する事項
のうち設立に際して出資される財産の価格又はその最低額は定款の認証前に定款
で定めなければならない(27Ⅳ)。発行可能株式総数も会社設立の時までに発起人
全員の同意によって定款に定めなければならない(37Ⅰ)。それ以外の事項は、定
款によらず定めることが可能である。そのうち、32条1項各号が定める3つは発
起人全員の同意で決める必要がある。
<株式の引受けとは?>
⇒出資を行って株主となることを設立中の会社に約束すること。
発起設立の場合、定款の作成時又はその後に行われる株式発行事項の決定(32Ⅰ)
により引受けが決まる。
募集設立の場合、発起人による募集に対して、株主になろうとする者が申込み
を行い、発起人がこの者に割り当てを行うことで引受けが確定する。
③出資の履行
発起人は株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき全額の
払込みをし、現物出資の場合にはその全部の給付をしなければならない(全額払込
制34Ⅰ本文)。払込みと給付を合わせて、出資の履行という。
金銭の払込みは、発起人が定めた払込取扱機関の払込取扱場所においてなされな
ければならない(34Ⅱ)。
期日までに出資の履行がなされないときは、株主となる権利を喪失する(失権。
36)。
<出資の履行の仮装>
出資の履行の仮装とは、実質的には出資の履行といえないが、その外観を作出
する行為をいう。
この代表例が、預合い(965)と見せ金である。
預合いとは、発起人が払込取扱機関の役職員と通謀して、払込取扱機関から借入
れをしてそれを払込みに充てる が、借入れを返済するまでは預金を引き出さない
ことを約束する(不返還合意)行為をいう。これは、通常帳簿上で資金がやり取り
される。
(1→借入れ。2→払込み。)
見せ金とは、発起人が払込取扱機関以外の者から借り入れた金銭を株式の払込み
に充て、会社成立後にそれを引き出して借入金の返済に充てること。
(1→借入れ。2→払込み。3→返済。4→貸
付け。5→返済。)
④設立時役員等の選任
会社の設立に際して取締役となる者を設立時取締役という(38Ⅰ)。機関設計に応
じてその他の役員等の選任も同時期に行われる(38ⅡⅢ)。合わせて設立時役員等
という。設立時役員等の選任は発起人の議決権の過半数によって決し、発起人の
議決権は1株につき1議決権である(40ⅠⅡ)。定款で設立時役員等を定めた場合
には、出資の履行が完了した場合に選任されたものとみなされる(38Ⅳ)。設立時
取締役・設立時監査役は設立経過の調査を行い、その結果、法令・定款違反又は
不当な事項があった場合には、各発起人に通知しなければならない(46Ⅱ)。
⑤変態設立事項
会社法28条は、一定の事項(変態設立事項)につき会社財産の形成を妨げるおそれ
の高い行為であることに鑑み、定款への記載を要求している。原則、裁判所の選
任する検査役の調査を受ける事を要する(33)。実務では、稀にしか用いられな
い。
①現物出資とは、金銭以外の財産による出資をいう。目的物としては、動産・不
動産・債権・有価証券・知的財産権などが挙げられる。募集設立の場合、現物出
資は発起人しか行うことができない。さらに、現物出資を行うには、原則検査役
調査が必要となる。調査の結果、裁判所は現物出資を不当と認めるときは、これ
を変更する決定をする(33Ⅶ)。定款変更の決定に不服のある発起人は、決定確定
後1週間以内に限り、株式引き受けの意思表示を取り消すことができる(同Ⅷ)。
そのとき、発起人全員の同意によって、決定の確定後1週間以内に限り、現物出
資についての定款規定を廃止する旨の定款変更を行うことができ(同Ⅸ)、それに
よって設立手続を続行することができる。例外として、33条10項各号に掲げる場
合には、検査役調査は不要となる。現物出資の目的物の価格が定款記載の価格に
著しく不足する場合には、発起人等は不足額を会社に支払う義務を負うことがあ
る。
②財産引受け(28②)とは、発起人が会社のため、会社の設立を条件として特定の
財産を譲り受ける旨の契約(売買契約)をいう。
③28条3号の「発起人が受ける報酬」とは、発起人が設立後の会社から受ける利
益のうち金額を確定しているものをいう。また、「その他の特別の利益」とは
個々の発起人に人的に帰属する利益である。
④設立費用(28Ⅳ)とは、会社の設立事務の執行のために必要な費用をいう。EX.
設立事務所の賃借料や株式の募集広告費など。総額の上限を定款に記載すること
が要求されている。なお、定款の認証手数料等の金額に客観性があり濫用のおそ
れがないので、定款記載は不要であり、記載がなくとも当然に成立後の会社に債
務が帰属する。
【次回】
1⑵募集設立についてから
4.会社法【総論】論点・補足編
おはようございます、marginal62です。
今朝は、台風前の晴れ間です。洗濯物を消化しております。
さて、今回は、前回の会社法【総論】を少し掘り下げて、いわゆる論点や詳細な点までレジュメ化していこうと思います。
基本的に、判例の立場と有名な学説(少数派を除く)を中心に試験向けに書くつもりです。
【目次】
1 一人会社
2 法人格否認の法理
1 一人会社
(0)そもそも一人会社は会社の社団性に反するのではないか?とも思われるが、潜在的
にいまだ社団性はある(今は1人でも、後々社員(株主)が増えることもある。)。
(これは、前回の記事の内容。)
⑴株主総会の招集手続
<問題>
⇒出資者が一人の場合の一人会社でも、株主総会の招集手続をしなければならない
のか?
➡不要説(最判昭46.6.24)
招集手続の趣旨(株主に総会への出席の機会を確保し、また準備のための時間を
与えること)から、株主は1人であり総会の開催に応じている以上、その利益を放
棄していると考えられる。
⑵会社の承認を欠く利益相反取引の可否
<問題>
⇒取締役会設置会社では、取締役会の承認が必要であるが(356Ⅰ②③、365Ⅰ)が、
取締役会設置会社において当該取締役が一人株主でる場合でも取締役会の承認が
必要か?
356Ⅰ②③、365Ⅰの趣旨(取締役がその地位を利用して会社と取引をし、自己又
は第三者の利益をはかり、会社ひいては株主に不測の損害を蒙らせないようにす
る。)からして、実質的な会社の利益の帰属主体たる株主が全員承諾しているなら
ば、取締役会の承認は不要としてもよい。
ただし、当該取締役(一人株主)は第三者に対する責任(429)を負う可能性あり。
⑶会社の承認を欠く譲渡制限株式の譲渡
<問題>
⇒譲渡制限株式(107Ⅰ①、107Ⅱ①)につき、定款所定の会社の承認がない場合に
会社との関係ではその効力は無効とされる(最判昭48.6.15)。
では、一人株主が全株式を譲渡した場合は?
➡承認不要説(最判平5.3.30)
譲渡制限制度は、会社にとって好ましくない者を排除し、他の株主の利益を保護
することにあるため、一人株主が全株式を譲渡しても問題とならない。
2 法人格否認の法理
⑴意義・根拠
<事案>
Aに対し債務を負うBが、強制執行逃れのため全財産を出資してC株式会社を
設立した。
(※→は債権を表します。誰ですか絵が下手と言ったのは)
<問題>
⇒この場合に法人格否認の法理により、Bに対する債権を根拠にC株式会社
に対し請求できるか?(BとCの法人格を同一と見てみる)
➡肯定説(最判昭44.2.27)
AはC株式会社に対しBの債務の履行を請求できる。
会社に法人格が付与されるのは、会社が社会的に存在する団体であって、
そうすることが国民経済に資するためであるから、法人として実体がないような
場合(形骸化)や法人格が濫用されている場合は、法人格を否定できる(民法1Ⅲ)。
⑵類型・要件
①形骸化事例(最判昭44.2.27)
法人とはいうが、実質は社員の個人企業や親会社の一営業部門にしかすぎないよ
うな場合。(認定が難しい)
EX,税金対策の会社設立(よくあること)
<判断要素は?>
⇒①業務活動混同の反復・継続
②会社と社員の義務・財産の全般的、継続的混同
③明確な帳簿記載・会計区分の欠如
④株主総会、取締役会の不開催等の強行法的組織規定の無視
②濫用事例
会社の背後にあって支配する者が、違法又は不当な目的のため、会社の法人格を
利用するような場合。
<要件は?>
⇒①支配の要件(背後者が会社を意のままに道具として用い得る支配的地位にあ
あり、会社法人格を利用している事実。)
②目的の要件(違法な目的。主観的要素。具体的には、新旧会社の支配者・役
員・従業員・事業内容・取引相手等の同一性、事業用資産の流用、事業や
資産の譲渡対価の額や支払方法、新会社設立についての債権者との交渉の有
無、新会社設立の目的などを考慮。)
【参考文献】
・魔法の本
今回は、総論に関連して二つの項目について論点を検討しました。
【次回】
会社法【設立】