4.会社法【総論】論点・補足編
おはようございます、marginal62です。
今朝は、台風前の晴れ間です。洗濯物を消化しております。
さて、今回は、前回の会社法【総論】を少し掘り下げて、いわゆる論点や詳細な点までレジュメ化していこうと思います。
基本的に、判例の立場と有名な学説(少数派を除く)を中心に試験向けに書くつもりです。
【目次】
1 一人会社
2 法人格否認の法理
1 一人会社
(0)そもそも一人会社は会社の社団性に反するのではないか?とも思われるが、潜在的
にいまだ社団性はある(今は1人でも、後々社員(株主)が増えることもある。)。
(これは、前回の記事の内容。)
⑴株主総会の招集手続
<問題>
⇒出資者が一人の場合の一人会社でも、株主総会の招集手続をしなければならない
のか?
➡不要説(最判昭46.6.24)
招集手続の趣旨(株主に総会への出席の機会を確保し、また準備のための時間を
与えること)から、株主は1人であり総会の開催に応じている以上、その利益を放
棄していると考えられる。
⑵会社の承認を欠く利益相反取引の可否
<問題>
⇒取締役会設置会社では、取締役会の承認が必要であるが(356Ⅰ②③、365Ⅰ)が、
取締役会設置会社において当該取締役が一人株主でる場合でも取締役会の承認が
必要か?
356Ⅰ②③、365Ⅰの趣旨(取締役がその地位を利用して会社と取引をし、自己又
は第三者の利益をはかり、会社ひいては株主に不測の損害を蒙らせないようにす
る。)からして、実質的な会社の利益の帰属主体たる株主が全員承諾しているなら
ば、取締役会の承認は不要としてもよい。
ただし、当該取締役(一人株主)は第三者に対する責任(429)を負う可能性あり。
⑶会社の承認を欠く譲渡制限株式の譲渡
<問題>
⇒譲渡制限株式(107Ⅰ①、107Ⅱ①)につき、定款所定の会社の承認がない場合に
会社との関係ではその効力は無効とされる(最判昭48.6.15)。
では、一人株主が全株式を譲渡した場合は?
➡承認不要説(最判平5.3.30)
譲渡制限制度は、会社にとって好ましくない者を排除し、他の株主の利益を保護
することにあるため、一人株主が全株式を譲渡しても問題とならない。
2 法人格否認の法理
⑴意義・根拠
<事案>
Aに対し債務を負うBが、強制執行逃れのため全財産を出資してC株式会社を
設立した。
(※→は債権を表します。誰ですか絵が下手と言ったのは)
<問題>
⇒この場合に法人格否認の法理により、Bに対する債権を根拠にC株式会社
に対し請求できるか?(BとCの法人格を同一と見てみる)
➡肯定説(最判昭44.2.27)
AはC株式会社に対しBの債務の履行を請求できる。
会社に法人格が付与されるのは、会社が社会的に存在する団体であって、
そうすることが国民経済に資するためであるから、法人として実体がないような
場合(形骸化)や法人格が濫用されている場合は、法人格を否定できる(民法1Ⅲ)。
⑵類型・要件
①形骸化事例(最判昭44.2.27)
法人とはいうが、実質は社員の個人企業や親会社の一営業部門にしかすぎないよ
うな場合。(認定が難しい)
EX,税金対策の会社設立(よくあること)
<判断要素は?>
⇒①業務活動混同の反復・継続
②会社と社員の義務・財産の全般的、継続的混同
③明確な帳簿記載・会計区分の欠如
④株主総会、取締役会の不開催等の強行法的組織規定の無視
②濫用事例
会社の背後にあって支配する者が、違法又は不当な目的のため、会社の法人格を
利用するような場合。
<要件は?>
⇒①支配の要件(背後者が会社を意のままに道具として用い得る支配的地位にあ
あり、会社法人格を利用している事実。)
②目的の要件(違法な目的。主観的要素。具体的には、新旧会社の支配者・役
員・従業員・事業内容・取引相手等の同一性、事業用資産の流用、事業や
資産の譲渡対価の額や支払方法、新会社設立についての債権者との交渉の有
無、新会社設立の目的などを考慮。)
【参考文献】
・魔法の本
今回は、総論に関連して二つの項目について論点を検討しました。
【次回】
会社法【設立】