5.会社法【設立】①
こんにちは、marginal62です。
今回は、会社法(REGAL QUEST会社法)から設立の分野をレジュメ化です。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
1 総説
<株式会社設立の過程>
⇒定款の作成・認証(26・30Ⅰ)→株式発行事項の決定(32)→株式の引受け(25)→出資
の履行(34)→設立時役員等の選任(38)→設立経過の調査(33・46)→設立登記(911)→
会社成立(49)
上の流れは株式会社の設立の流れを簡単に表したものです(発起設立ベース)。
株式会社の設立は、実体の形成+法人格の付与(取得)からなる。法人格の付与につき
準則主義(法定の手続を得れば、国から法人格が付与される。)がとられている。
⑴発起人
発起人とは、発起人として定款に署名した者(27⑤・26Ⅰ)をいう。たとえ発起人ら
しい行動をしていた(擬似発起人)としても、定款に住所・氏名を記載して署名しな
かった者は発起人とはならない(大判明治41.1.29)。形式的に判断するのである。し
かし、擬似発起人は、募集設立において発起人と同様の責任を負う(103Ⅳ)こととさ
れている。
発起人は、設立を企画し設立事務を行うとともに、出資を行い会社設立時に株主と
なる(発起人は、少なくとも1株は引き受けなければならない)。発起人の資格に制
限はなく、法人でもなることができる。
⑵発起設立・募集設立
発起設立とは、会社設立時に発行される株式の全部を発起人が引き受ける方法
(25Ⅰ①)により行われる設立方法をいう。
募集設立とは、発起人は会社設立時に発行される株式の一部だけを引き受け、残部
は発起人以外の者による引き受けを募集する方法(25Ⅰ②)により行われる設立方法
をいう(実務ではほとんど行われず、発起設立が一般的。)。
2 設立の手続
⑴発起設立
①定款の作成・認証
<定款とは?>
⇒実質的意義の定款→会社の組織と活動に関する根本規則。
形式的意義の定款→そのような規則を記載した書面又は電磁的記録。
株式会社設立の際には、定款を作成し、その全員が定款に署名又は記名押印する
ことが必要である(26Ⅰ)。
<定款の記載事項の種類>
⇒絶対的記載事項→必ず記載しなければならない事項。欠くと、無効となる。
相対的記載事項→必ず記載することを要しないが、定款で定めておかなければ
その事項について効力が認められない事項。
任意的記載事項→定款に記載せず、株主総会決議・取締役会により制定する規
則等により定めても効力は生じるが、事項の明確化を図る目
的で記載される事項。
定款は、その内容を明確にして後日の紛争を防止するため、公証人の認証を受け
なければならない(30Ⅰ)。認証を受ける対象になる定款を、原始定款といい、変
更することが可能である。定款変更の際は認証は必要ない。
絶対的記載事項は、①会社の目的、②商号、③本店所在地、④設立に際して出資
される財産の価格又はその最低額、⑤発起人の氏名又は名称及び住所(27)、⑥発
行可能株式総数(37)である。①目的とは、会社の営む事業をいう。②商号とは、
会社の名称をいう(6Ⅰ)。⑥発行可能株式総数とは、会社が発行することのできる
株式の総数をいう。
28条各号が定める事項(変態設立事項)は、会社の財産形成を危うくする危険があ
るため、定款に所定の事項を記載させ、検査役の調査を受けさせることが法で要
求されている。
②株式発行事項の決定及び株式の引受け
設立の際に発行される株式を設立時発行株式という(25Ⅰ①)。これに関する事項
のうち設立に際して出資される財産の価格又はその最低額は定款の認証前に定款
で定めなければならない(27Ⅳ)。発行可能株式総数も会社設立の時までに発起人
全員の同意によって定款に定めなければならない(37Ⅰ)。それ以外の事項は、定
款によらず定めることが可能である。そのうち、32条1項各号が定める3つは発
起人全員の同意で決める必要がある。
<株式の引受けとは?>
⇒出資を行って株主となることを設立中の会社に約束すること。
発起設立の場合、定款の作成時又はその後に行われる株式発行事項の決定(32Ⅰ)
により引受けが決まる。
募集設立の場合、発起人による募集に対して、株主になろうとする者が申込み
を行い、発起人がこの者に割り当てを行うことで引受けが確定する。
③出資の履行
発起人は株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき全額の
払込みをし、現物出資の場合にはその全部の給付をしなければならない(全額払込
制34Ⅰ本文)。払込みと給付を合わせて、出資の履行という。
金銭の払込みは、発起人が定めた払込取扱機関の払込取扱場所においてなされな
ければならない(34Ⅱ)。
期日までに出資の履行がなされないときは、株主となる権利を喪失する(失権。
36)。
<出資の履行の仮装>
出資の履行の仮装とは、実質的には出資の履行といえないが、その外観を作出
する行為をいう。
この代表例が、預合い(965)と見せ金である。
預合いとは、発起人が払込取扱機関の役職員と通謀して、払込取扱機関から借入
れをしてそれを払込みに充てる が、借入れを返済するまでは預金を引き出さない
ことを約束する(不返還合意)行為をいう。これは、通常帳簿上で資金がやり取り
される。
(1→借入れ。2→払込み。)
見せ金とは、発起人が払込取扱機関以外の者から借り入れた金銭を株式の払込み
に充て、会社成立後にそれを引き出して借入金の返済に充てること。
(1→借入れ。2→払込み。3→返済。4→貸
付け。5→返済。)
④設立時役員等の選任
会社の設立に際して取締役となる者を設立時取締役という(38Ⅰ)。機関設計に応
じてその他の役員等の選任も同時期に行われる(38ⅡⅢ)。合わせて設立時役員等
という。設立時役員等の選任は発起人の議決権の過半数によって決し、発起人の
議決権は1株につき1議決権である(40ⅠⅡ)。定款で設立時役員等を定めた場合
には、出資の履行が完了した場合に選任されたものとみなされる(38Ⅳ)。設立時
取締役・設立時監査役は設立経過の調査を行い、その結果、法令・定款違反又は
不当な事項があった場合には、各発起人に通知しなければならない(46Ⅱ)。
⑤変態設立事項
会社法28条は、一定の事項(変態設立事項)につき会社財産の形成を妨げるおそれ
の高い行為であることに鑑み、定款への記載を要求している。原則、裁判所の選
任する検査役の調査を受ける事を要する(33)。実務では、稀にしか用いられな
い。
①現物出資とは、金銭以外の財産による出資をいう。目的物としては、動産・不
動産・債権・有価証券・知的財産権などが挙げられる。募集設立の場合、現物出
資は発起人しか行うことができない。さらに、現物出資を行うには、原則検査役
調査が必要となる。調査の結果、裁判所は現物出資を不当と認めるときは、これ
を変更する決定をする(33Ⅶ)。定款変更の決定に不服のある発起人は、決定確定
後1週間以内に限り、株式引き受けの意思表示を取り消すことができる(同Ⅷ)。
そのとき、発起人全員の同意によって、決定の確定後1週間以内に限り、現物出
資についての定款規定を廃止する旨の定款変更を行うことができ(同Ⅸ)、それに
よって設立手続を続行することができる。例外として、33条10項各号に掲げる場
合には、検査役調査は不要となる。現物出資の目的物の価格が定款記載の価格に
著しく不足する場合には、発起人等は不足額を会社に支払う義務を負うことがあ
る。
②財産引受け(28②)とは、発起人が会社のため、会社の設立を条件として特定の
財産を譲り受ける旨の契約(売買契約)をいう。
③28条3号の「発起人が受ける報酬」とは、発起人が設立後の会社から受ける利
益のうち金額を確定しているものをいう。また、「その他の特別の利益」とは
個々の発起人に人的に帰属する利益である。
④設立費用(28Ⅳ)とは、会社の設立事務の執行のために必要な費用をいう。EX.
設立事務所の賃借料や株式の募集広告費など。総額の上限を定款に記載すること
が要求されている。なお、定款の認証手数料等の金額に客観性があり濫用のおそ
れがないので、定款記載は不要であり、記載がなくとも当然に成立後の会社に債
務が帰属する。
【次回】
1⑵募集設立についてから