7.会社法【設立】③
こんばんは、marginal62です。
今回は、会社法の設立の第三弾です。
ではさっそく。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
3 設立中の法律関係
⑴設立中の会社
設立中の会社の登記前はまだ権利能力を有しないため、発起人が会社の設立の過
程で取得し又は負担した権利義務は形式的には発起人に帰属し、会社が成立すれ
ば、発起人の権限内で行われた行為の効果はそのまま会社に帰属する。
権利能力なき社団である設立中の会社と成立後の会社が同一であるとする考え(同一
性説)から、発起人が会社設立のために取得し負担した権利義務は実質的には設立中
の会社に帰属しており、会社が成立すればそれらは会社に帰属する。
⑵発起人の権限
発起人が設立中の会社のためになす可能性のある行為は、①設立を直接の目的とす
る行為、②設立のために必要な行為、③財産引受け(または開業準備行為)、④事業
行為に大別される。
<①について>
①について発起人に権限があることに争いなし。
①→EX.定款作成、株式の引受け・払込みに関する行為、創立総会の招集など
<②について>
B→A社発起人。C→公証人。
認証手数料未払い。(赤✕)
CはA社に認証手数料を請求可能か?
②は定款認証手数料・印紙税、払込取扱機関に支払う手数料・報酬、検査役の報
酬、設立登記の登録免許税と、その他の設立費用に区別される。
前者は、条文上(28④括弧書など)明らか。
それ以外の設立のために必要な行為(設立費用)は、定款にその額の記載を要す
る。総額の(上限額)を定款に記載し、検査役の調査(33)を受けることが必要。
判例は設立費用につき、定款に記載された額の限度内において、発起人のした取引
の効果は成立後の会社に帰属し、相手方は会社に対してのみ支払を請求できるとす
る(発起人には請求できない。)。
<定款の設立費用の額の記載より実際の支出費用が多い場合の処理>
⇒A説ー判例を支持する学説
B説ー判例に批判的な学説
詳しくは割愛。
<③について>
DはA社の成立を条件に、成立後のA社が使用する予定の建物
の売買契約を締結。
DはA社に代金請求可能か?(財産引受け)
EはA社の成立を条件に、成立後のA社が使用する予定のマン
ション一室を賃貸する契約を締結。
EはA社に賃料請求できるか?(開業準備行為)
③財産引受けとは、会社の成立後に特定の財産を譲り受ける契約をいう。
これを行うには、財産の種類ごとにその価格・譲受人の氏名を定款に記載すること
が必要であり(28②)、原則として検査役調査(33)か価格の相当性につき弁護士等の
証明が必要。
定款に記載のない財産引受けは無効である(28柱書)。
<会社成立後に会社が追認できるか?>
⇒否定(判例)
対し、学説は会社に有利な取引であれば会社成立後の追認を認めることのほうが
会社の利益になり、会社の財産的基礎が害されないとの理由で、追認を肯定する
立場もある。
<取引後相当期間経過後に会社が無効主張できるか?>
⇒定款記載を欠く財産引受けを無効とした趣旨は、広く株主・会社債権者等の会社
の利害関係人を保護するものである。よって、本件譲受けは何人との関係におい
ても常に無効であり、会社が追認したとしても有効となるものではない。(判例)
会社は特段の事情がない限りいつでも無効主張できる。
しかし、特段の事情(契約後相当期間経過等)があれば、信義則に反し会社の無効
主張は許されない。
いわゆる開業準備行為とは、会社法に定めはなく、「会社が事業を始める準備とし
て行う行為」「会社が成立後すぐ事業を行えるように、土地・建物等を取得した
り、原材料の仕入れや製品の販売ルートを確立しておくなどの行為」をいう。
<開業準備行為につき、財産引受けに関する規定を類推適用すべきか?>
⇒財産引受けに関する法28・33をそれ以外の開業準備行為に類推適用することを
しない。(判例)
<④について>
B→A社発起人。F→旅行代理店会社。
BはA社成立前にFからチケットを購入。
FはA社に代金請求できるか?
④が成立後の会社に帰属しないことに争いなし。