9.会社法【設立】論点編
こんばんは、marginal62です。
今回は、設立分野をもう少し深く突き詰めて論点をまとめてみました。
各種資格試験に対応する記事です。
それではレジュメ化です。
【目次】
1 見せ金
⑴払込の効力
⑵生じる責任
2 設立中の会社
⑴意義
⑵発起人の権限
⑶設立費用・財産引受け・財産引受け以外の開業準備行為の処理
3 会社設立の瑕疵
⑴設立行為(現物出資)に対する詐害行為取消の可否
1 見せ金
⑴払込の効力
<見せ金とは?>
⇒発起人が払込取扱銀行以外の者から金銭を借入れて株式の払込に充て、会社の成
立後にこれを引き出し、その借入金を返済すること。
<問題>
⇒見せ金については明文規定がないため、効力が問題となる。
➡(一部)無効説(最判昭38.12.6)
①会社成立後の借入金を返済するまでの長短、②払戻金が会社資金として運用さ
れた事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等の事情
をもって見せ金にあたる場合は、払込は無効。
形式的にみると個々の行為は有効。しかし、全体としてみると仮装払込のからく
りの一環にすぎず、実質では払込があったといえない。
⑵生じる責任
<見せ金をした発起人(引受人)の責任>
➡会社に対し、仮装した金額の全額の支払義務(52の2Ⅰ・102の2Ⅰ、102Ⅲ)
任務懈怠責任として、会社・第三者に生じた損害の賠償責任(53)
<仮装に関与した発起人の責任>
➡上記責任と同様。
ただし、無過失を立証すれば免責(52の2Ⅱ・103Ⅱ)
<金銭取得行為を行った取締役の責任>
➡任務懈怠責任(423・429)
場合によっては、利益相反取引(356Ⅰ)となり、任務懈怠の推定等の効果。
<場合によっての内容>
⇒代表取締役が会社から借り受けて弁済したような場合
<募集設立の場合の払込取扱機関の責任>
➡銀行が悪意又は重過失であったときは、保管証明責任(64Ⅱ)を負う(通説)。
2 設立中の会社
⑴意義
<問題>
⇒設立中の会社の法的性質は、権利能力なき社団とされている(通説)。では、設立
中に発起人がなした法律行為の効果が設立後の会社に帰属することをどう説明
付けるか?
➡同一性説
設立中の会社と成立後の会社は実質的に同一のものであるとする。
法人格が未だ付与されていない段階においても、会社の社団形成自体は徐々に
行われており、一定の段階で権利能力なき社団たる設立中の会社の成立を認める
ことができる。
⑵発起人の権限
<事案>
a 会社の形成・設立それ自体を目的とする行為
EX.定款作成、創立総会の招集
b 会社の設立にとって法律上・経済上必要な行為
EX.設立事務所の賃借、設立事務員の受入れ
c 会社の営業を開始する準備行為
EX.開業準備行為
d 営業行為
<問題>
⇒設立中の会社の発起人の権限がどの程度まで及ぶのか?
➡設立中の会社は会社の設立を目的とするから、発起人は会社の設立のために直接
必要な行為はもとより、設立のために事実上・経済上必要な行為まで及ぶ。
bのうち定款で定めた設立費用(28④)の範囲内で権限を認める。
⑶設立費用・財産引受け・財産引受け以外の開業準備行為の処理
<事案>
a Aは設立手続中のB会社の株式募集の広告をした(設立費用)
b Dは成立後のE社が使用する予定の建物を、会社の成立を条件にE社に売却する
売買契約を締結した(財産引受け)
c Fは成立後のG社に関する広告を行う契約を締結した(開業準備行為)
<aについて>
➡定款記載の範囲内でB社に効果帰属、それを超える部分については発起人に効果
帰属
<bについて>
➡定款に記載がないものについては無効。会社からの追認も不可。
DE間の売買契約は無効。
28②は開業準備行為である財産引受けにつき、例外的に発起人の権限を認めたも
のであり、定款に記載のない場合には追認も認めるべきでない。
<cについて>
➡会社との契約は無効。会社に対し請求不可。
<取引相手の保護は?>
FG間の広告契約は無効。Fは生じた費用を発起人へ請求可能。
3 会社設立の瑕疵
⑴設立行為(現物出資)に対する詐害行為取消の可否
<問題>
⇒株式会社において詐害的な設立行為がなされた場合、民法上の詐害行為取消権
(民法424)により、設立行為を取り消すことはできるか?
(持分会社においては、832②で設立取消の訴えが認められている)
➡肯定説(裁判例)
832②は民法424の特則。
株式会社の場合は一般法たる民法424が適用されるとするべき。
<要件あてはめ>
①詐害性
現物出資財産の適正な価格で株式を割り当てた場合であっても、無資力状態で
全財産を出資すれば詐害性あり。
②詐害意思
出資者(債務者)について判断し、無資力の状態で全財産を出資する場合には、
客観的な詐害性が高いから、その旨の認識のみで足りる。
③受益者の悪意
設立中の会社の発起人総代を基準として判断
今回は会社法設立の分野から、論点をピックアップしてみました。
【次回】
会社法【株式】