marginal62の書籍レジュメ化ブログ

はじめまして、marginal62です。訪問いただきありがとうございます。ここでは、自分が読んだ書籍を自分なりにレジュメ化したものを掲載しております。専攻している法律系の書籍が中心となりますが、その他にも気になったものはレジュメ化していきます。レジュメ化する趣旨は、自身の学習の過程をついでに発信してしまおうというものです。これを見てくださった方の学習等にも役立ち、また、コメント等を通じて情報や意見の交換ができれば、なお嬉しいです。各種資格試験にも挑戦しております(法律系)。その経過も記事にしていきます。

【番外】破産法②

 

おはようございます、marginal62です。

今回は、昨日に引き続き番外編②ということで、同じく破産法から論文形式の記事です。

 

<破産手続開始決定の効果について>

 破産手続開始の効果として中心は、破産者からの財産管理処分権の剥奪と破産管財人への専属(破産法(以下、法令名省略。)78条1項)、及び破産債権者の個別的権利行使の禁止(100条1項)である。以下、法人に対する効果と自然人に対する効果をそれぞれ説明する。

1 法人及び自然人に共通の破産手続開始の効果

 両者に共通するものとして、説明義務及び重要財産開示義務がある。

説明義務は、破産者の財産の内容や所在、破産に至った経緯などに関する情報を提供させ、破産管財人の管財事務遂行の資料とし、また破産債権者が管財事務に対する監督を行うための資料を提供させるためのものである。

さらに、破産者は、破産手続開始後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない(重要財産開示義務。41条)。これは、破産管財人などからの求めの有無にかかわらず、裁判所に対し定型的に重要財産に関する書面による開示義務を課した点に特徴がある。

これら2つは、それぞれ義務違反があれば、破産犯罪(268条1項2項、269条)となり、また免責不許可事由ともされる(252条1項11号)。

2 法人に対する破産手続開始の効果

 法人に対して破産手続開始決定がなされると一般法人法や会社法の規定に基づき法人は解散する。しかし、通常とは異なり解散に引き続いての清算手続はなされず、破産管財人による清算がこれに代わる。ただし、破産手続開始後であっても、破産法人の法人格は、破産の目的の範囲内でなお存続するものとみなされる(35条)。なぜなら、破産法人の財産管理処分権は破産管財人に専属するが(78条1項)、あくまで財産の帰属主体は破産法人であり、破産清算が完了するまでその法人格を存続させる必要があるためである。破産手続が進行し、配当が行われ、220条2項に基づいて破産手続終結決定の公告がなされると、その時点で破産法人の法人格は消滅する。

3 自然人に対する破産手続開始の効果

 (1)居住制限

   破産者の所在把握のため、破産者は申立てに基づいて裁判所の許可なくその居住地を離れることができない(37条1項)。申立て却下に対する不服申立てとして、即時抗告が認められる(37条2項)。また、これに違反すれば、免責不許可事由となる(252条1項11号)。なお、破産者に準じる者(法人の理事など)にも居住制限が課される。

 ⑵引致

   破産者が説明義務を尽くさないなど必要があると認めるときは、裁判所は引致状を発して、破産者の引致を命ずることができる(38条1項3項)。引致には、刑事訴訟法及び刑事訴訟規則中の勾引に関する規定が準用される(38条5項)。引致を命ずる決定に対しては、破産者又は債務者は即時抗告によって不服を申し立てることができる(38条4項)。なお、破産者に準じる者(法定代理人など)についても引致が可能である。

 ⑶通信の秘密制限

   破産管財人が破産者の財産状態や取引関係を把握するために必要があると認めるときは、裁判所は、破産者宛の郵便物や信書便物を破産管財人に配達するように信書送達事業者に嘱託することができ(81条1項)、破産管財人は受け取った郵便物等を自ら開封し読むことができる(82条1項)。これは、憲法21条2項により保障された通信の秘密に合理的制限を加えたものである。

また、破産者は破産管財人へ配達嘱託の取り消しを求めることができる。裁判所は破産管財人の意見を聴取したうえ、取り消すこともできる。変更も同様であり、取消や変更は、裁判所の職権で行われることもある(81条2項)。

破産手続が終了したときは、裁判所は配達嘱託を取り消さなければならない(81条3項)。

破産者は、破産管財人に配達された郵便物等の閲覧請求ができ、破産財団に関しない郵便物等の交付を求めることができる(82条2項)。

なお、不服申立てとして、破産者又は破産管財人は即時抗告ができるが、即時抗告には執行停止の効力はない(81条5項)。

 ⑷資格制限

   弁護士、公認会計士、後見人などの公法上あるいは私法上の資格を有する者が破産手  

 続開始決定を受け、未だ復権していないときは、それぞれの資格をうることはできない

 し、また、現に有している資格は失う。

 株式会社の取締役については、現に取締役である者が破産手続開始決定を受けた場合、会社法330条により会社と取締役との関係が委任とされていることから、民法653条2号の規定によって取締役を退任しなければならない。

 また、破産手続開始決定を受けた者を新たに取締役に選任できるかについては、会社法制定後は規定が存在しないことから、株主総会の判断に委ねている。

 

 

【参考文献】

・伊藤眞 破産法・民事再生法【第2版】 有斐閣 2009年

・佐藤鉄男ほか 民事手続法入門【第4版】 有斐閣 2013年