9.会社法【設立】論点編
こんばんは、marginal62です。
今回は、設立分野をもう少し深く突き詰めて論点をまとめてみました。
各種資格試験に対応する記事です。
それではレジュメ化です。
【目次】
1 見せ金
⑴払込の効力
⑵生じる責任
2 設立中の会社
⑴意義
⑵発起人の権限
⑶設立費用・財産引受け・財産引受け以外の開業準備行為の処理
3 会社設立の瑕疵
⑴設立行為(現物出資)に対する詐害行為取消の可否
1 見せ金
⑴払込の効力
<見せ金とは?>
⇒発起人が払込取扱銀行以外の者から金銭を借入れて株式の払込に充て、会社の成
立後にこれを引き出し、その借入金を返済すること。
<問題>
⇒見せ金については明文規定がないため、効力が問題となる。
➡(一部)無効説(最判昭38.12.6)
①会社成立後の借入金を返済するまでの長短、②払戻金が会社資金として運用さ
れた事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等の事情
をもって見せ金にあたる場合は、払込は無効。
形式的にみると個々の行為は有効。しかし、全体としてみると仮装払込のからく
りの一環にすぎず、実質では払込があったといえない。
⑵生じる責任
<見せ金をした発起人(引受人)の責任>
➡会社に対し、仮装した金額の全額の支払義務(52の2Ⅰ・102の2Ⅰ、102Ⅲ)
任務懈怠責任として、会社・第三者に生じた損害の賠償責任(53)
<仮装に関与した発起人の責任>
➡上記責任と同様。
ただし、無過失を立証すれば免責(52の2Ⅱ・103Ⅱ)
<金銭取得行為を行った取締役の責任>
➡任務懈怠責任(423・429)
場合によっては、利益相反取引(356Ⅰ)となり、任務懈怠の推定等の効果。
<場合によっての内容>
⇒代表取締役が会社から借り受けて弁済したような場合
<募集設立の場合の払込取扱機関の責任>
➡銀行が悪意又は重過失であったときは、保管証明責任(64Ⅱ)を負う(通説)。
2 設立中の会社
⑴意義
<問題>
⇒設立中の会社の法的性質は、権利能力なき社団とされている(通説)。では、設立
中に発起人がなした法律行為の効果が設立後の会社に帰属することをどう説明
付けるか?
➡同一性説
設立中の会社と成立後の会社は実質的に同一のものであるとする。
法人格が未だ付与されていない段階においても、会社の社団形成自体は徐々に
行われており、一定の段階で権利能力なき社団たる設立中の会社の成立を認める
ことができる。
⑵発起人の権限
<事案>
a 会社の形成・設立それ自体を目的とする行為
EX.定款作成、創立総会の招集
b 会社の設立にとって法律上・経済上必要な行為
EX.設立事務所の賃借、設立事務員の受入れ
c 会社の営業を開始する準備行為
EX.開業準備行為
d 営業行為
<問題>
⇒設立中の会社の発起人の権限がどの程度まで及ぶのか?
➡設立中の会社は会社の設立を目的とするから、発起人は会社の設立のために直接
必要な行為はもとより、設立のために事実上・経済上必要な行為まで及ぶ。
bのうち定款で定めた設立費用(28④)の範囲内で権限を認める。
⑶設立費用・財産引受け・財産引受け以外の開業準備行為の処理
<事案>
a Aは設立手続中のB会社の株式募集の広告をした(設立費用)
b Dは成立後のE社が使用する予定の建物を、会社の成立を条件にE社に売却する
売買契約を締結した(財産引受け)
c Fは成立後のG社に関する広告を行う契約を締結した(開業準備行為)
<aについて>
➡定款記載の範囲内でB社に効果帰属、それを超える部分については発起人に効果
帰属
<bについて>
➡定款に記載がないものについては無効。会社からの追認も不可。
DE間の売買契約は無効。
28②は開業準備行為である財産引受けにつき、例外的に発起人の権限を認めたも
のであり、定款に記載のない場合には追認も認めるべきでない。
<cについて>
➡会社との契約は無効。会社に対し請求不可。
<取引相手の保護は?>
FG間の広告契約は無効。Fは生じた費用を発起人へ請求可能。
3 会社設立の瑕疵
⑴設立行為(現物出資)に対する詐害行為取消の可否
<問題>
⇒株式会社において詐害的な設立行為がなされた場合、民法上の詐害行為取消権
(民法424)により、設立行為を取り消すことはできるか?
(持分会社においては、832②で設立取消の訴えが認められている)
➡肯定説(裁判例)
832②は民法424の特則。
株式会社の場合は一般法たる民法424が適用されるとするべき。
<要件あてはめ>
①詐害性
現物出資財産の適正な価格で株式を割り当てた場合であっても、無資力状態で
全財産を出資すれば詐害性あり。
②詐害意思
出資者(債務者)について判断し、無資力の状態で全財産を出資する場合には、
客観的な詐害性が高いから、その旨の認識のみで足りる。
③受益者の悪意
設立中の会社の発起人総代を基準として判断
今回は会社法設立の分野から、論点をピックアップしてみました。
【次回】
会社法【株式】
【憲法】新しい人権(判例論文)
こんばんは、marginal62です。
目次
1 13条(生命・自由・幸福追求権)と新しい人権
2 プライバシー権
⑴沿革と意味
⑵最判昭56年4月14日
⑶最大判昭44年12月24日
⑷最判平7年12月15日
⑸最判平15年9月12日
⑺最判平20年3月6日
⑻判例における理解
3 自己決定権
⑴最判平12年2月29日
⑵最判平3年9月3日
4 総括
1 13条(生命・自由・幸福追求権)と新しい人権
⑴個人の尊厳
個人の尊厳とは、個人の平等かつ独立な人格的価値を承認することをいう。13条前段は、国家が国民個人の人格的価値を承認する、すなわち、個人は立法その他国政のあらゆる場において尊重されるという個人主義原理を表明したものである。
⑵13条の法的性格
日本国憲法は、14条以下において、細かな人権規定を定めている。しかし、これらの人権規定は、歴史的に見て国家権力によって侵害されることが多かった重要な権利・自由を列挙したもので、全ての人権を網羅的に掲げたものではない(人権の固有性)。社会の変革に伴い、「自律的な個人が人格的に生存するために不可欠と考えられる基本的な権利・自由」として保護に値すると考えられる法的利益は、「新しいい人権」として、憲法上保障される人権の1つだと解する。その根拠が、憲法13条の幸福追求権である。この幸福追求権は、激しい社会・経済の変動により発生した諸問題に対して法的に対応する必要性が増大したため、意義が見直された。その結果、個人尊厳の原理に基づく幸福追求権は、憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的・包括的な権利であり、これによって基礎づけられる個々の権利は、裁判上の救済を受けることができる具体的権利と解されるようになった。判例も具体的権利性を肯定している(最大判昭44年12月24日刑集23巻12号1625頁)。
⑶幸福追求権の意味
幸福追求権は、個別の基本権を包括する基本権であるところ、その内容はあらゆる生活領域に関する行為の自由(一般的行為の自由)ではない。個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体をいう(人格的利益説)と解する。また、個別の人権を保障する条項との関係は、一般法と特別法の関係にあり、個別の人権が妥当しない場合に限って補充的に13条が適用される(補充適用説)。
⑷幸福追求権から導き出される人権
幸福追求権からどのような具体的権利が導き出されるのか、また、それが新しい人権の1つとして承認されるのかの判断基準は定まっていない。この点、これまで新しい人権として主張されてきたのは、プライバシーの権利、環境権、日照権、静穏権、眺望権、入浜権、嫌煙権、健康権、情報権、アクセス権、平和的生存権などがあるが、最高裁が正面から認めたものはプライバシーの権利としてのいわゆる肖像権くらいである。また、これらの権利につき、明確な基準もなく、裁判所が憲法上の権利として承認することになると、裁判所の主観的価値判断によって権利が創設されることにつながる。そこで、憲法上の権利といえるかどうかは、特定の行為が個人の人格的生存に不可欠であるほか、その行為を社会が伝統的に個人の自律的決定に委ねられたものと考えているか、その行為は多数の国民が行おうと思えば行うことのできるか、いっても他人の基本権を侵害する虞がないかなど、種々の要素を考慮して慎重に決定しなければならない。
2 プライバシー権
⑴沿革と意味
幸福追求権を主要な根拠として判例・通説によって認められているプライバシーの権利は、「ひとりで放っておいてもらう権利」としてアメリカの判例において発展してきた。日本では、昭和39年の「宴のあと」事件第1審判決において、「私生活をみだりに公開されない権利」として次の3つの要件を満たす場合にプライバシー権が認められるとした。①私生活上の事実又は事実らしく受け取られるおそれのある事柄であり(私事性)、②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であり(秘匿性)、③一般の人にいまだ知られていない事柄であること(非公然性)。ただし、あくまでも私法上の権利として認めたものであり、憲法上の権利として認めたわけではないことに留意する必要がある。
しかし、このように個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという自由権的・消極的なものとして理解されてきたプライバシー権は、情報化社会の進展に伴い、「自己に関する情報をコントロールする権利」(情報プライバシー権)と捉えられて、自由権的側面のみならず社会権的(請求権的)側面を生じることとなった(自己情報コントロール権説)。ここで、自由権的側面とは、国家が個人の意思に反して接触を強要し、みだりにその人に関する情報を収集し利用することが禁止され、また、個人の人格的生存には直接かかわりのない外的事項に関する情報についても、国家がみだりにこれを集積し又は公開することは禁止されることを意味する。さらに、社会権的(請求権的)側面とは、個人情報が行政機関によって集中的に管理されていることから、国家機関の保有する自己の情報の開示や訂正・削除を公権力に対して積極的に請求していくことをいう。
⑵最判昭56年4月14日
本判例は、「前科及び犯罪経歴(以下、『前科等』という。)は、人の名誉、信用に直接かかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する」とし、これらの情報がプライバシー権の保護の対象になるか否かは明言していないが、伊藤裁判官補足意見では、「前科等は、個人のプライバシーのうちでも最も他人に知られたくないものの一つ」であるとしている。自己情報コントロール権説からは、個人の道徳的自律の存在に直接関わる情報(プライバシー固有情報)に位置付けられ、個人の意に反した情報の取得・利用は直ちにプライバシー侵害となる。
⑶最大判昭44年12月24日
本判例は、個人の私生活上の自由の一つとして、本人の承諾なしに、みだりに容貌等を撮影されない自由があり、それが憲法13条によって保障されるとしたが、肖像権についてはふれていない(「これを肖像権と称するかどうかは別として」としており、肖像権を認めるとも認めないとも言っていない)。
審査基準の面では、「現に犯罪が行われもしくは行われたのち間がないと認められる場合であって、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもって行われるとき」に限り写真撮影を認めるものであり、比較的厳格な基準によるものと解される。
⑷最判平7年12月15日
本判例は、「指紋は」「それ自体では個人の私生活や人格、思想、信条、良心等個人の内心に関する情報となるのではない」とし、固有情報性を否定しつつ、「性質上万人不同性、終身不変性をもつので、採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険性がある」と指摘し、指紋を手掛かりに個人情報を名寄せできるという指紋のインデックス性を承認し、「何人も」「みだりに指紋の押なつを強制されない自由」が「我が国に在留する外国人にも等しく」保障されるとして、その保障が外国人にも及ぶことを明らかにした。合憲性の判断基準の観点からは、少なくとも厳格な審査基準を採用しているとはいえないと解されるところ、学説はインデックス情報であるにも関わらず緩やかに審査した点に批判をする。しかし、押なつの頻度、対象指紋の数、強制の程度等を踏まえ、「精神的、肉体的に過度の苦痛を伴うものとまではいえ」ないとしており、さらに開示・公表が問題となっているわけでもないので、制約の程度は低いと解される。
⑸最判平15年9月12日
本判例の調査官解説は、プライバシーの権利を、「私的領域への介入を拒絶し、自己に関する情報を自ら管理する権利」と捉えたうえで、「情報開示の態様によるプライバシー侵害において、『他人に知られたくない私生活上の事実又は情報をみだりに開示されない利益又は権利』を個人の人格的な利益であるプライバシーの利益又は権利として認めることができよう。」としている。そのうえで、「他人に知られたくないかどうかは、一般人の感受性を基準に判断すべきである。」とし、「具体的な情報がプライバシーとして保護されるべきものであるとされるためには、①個人の私生活上の事実又は情報で、周知のものでないこと、②一般人を基準として、他人に知られることで私生活上の(私生活における心の)平穏を害するような情報であること、が必要であると考えられる。」としている。
本判例における第1の争点は、聞きたくない音(表現)を聞かない自由を憲法上どのように位置づけるかという点である。この点、伊藤裁判官補足意見は、「個人が他者から自己の欲しない刺戟によって心の静穏を乱されない利益」であると捉え、13条の問題とした。他にも、21条1項をもとに消極的知る自由と解することもできる。
第2の争点は、伊藤裁判官が指摘する、「侵害行為の態様との相関関係において違法な侵害であるかどうか」である。この点、上記自由保護の要請は、基本的に住宅などプライベートな場所において妥当し公共の場では弱まること、しかし、公共交通機関内部では、移動の必要から乗車等を拒否できないこと、視覚と異なり聴覚の性質上聞くことを拒否できないことに鑑み、再度この要請が強まると解される。
また、本件では地下鉄の利用関係が公法関係か私法関係かが問題となるが、伊藤裁判官は後者として捉えている。この理解によると、間接適用説(人権保障の精神に反する行為については、私法の一般条項(民90条、709条)を媒介として人権規定の価値を私人間にも及ぼす)を前提に、上記自由と対立する利益との比較衡量となる。他方、Y市交通局が公営企業である点を重視すれば、憲法の人権規定を直接適用できることになり、この場合、人格権を大阪市という公権力が脅かしているので、その行動の目的と手段につき合理性の基準を用いて判断することになる。
⑺最判平20年3月6日
本判例は、「個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由」を住基ネットが「侵害するものではない」とし、権利に対する制約がないと解している。この根拠としては、主に①その利用等が、法令等によって、正当な行政目的の範囲内に限定されていること、②住基ネットの「構造」乃至アーキテクチャの堅牢性(システムの安全性、懲戒・刑罰による漏洩等の厳格な禁止、監視機関等、適切な運用を担保するための制度的措置の存在)から、「正当な」範囲を超えて(みだりに)本人確認情報が開示等される「具体的危険」もないことにある。
また、本判例で問題となっているのは、実際に開示・公表があったかではなく、第三者にみだりに開示・公表される具体的危険の有無である。このような危険が認められたならば、具体的に開示・公表がなされていなくとも、上記自由の侵害が認められうる。
⑻判例における理解
最高裁は一義的に明確な内容を有する権利としての「プライバシー権」という概念を認めていないが、公権力との関係において、「みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由」「みだりに指紋の押なつを強制されない自由」「個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由」が、それぞれ「個人の私生活上の自由」の一つとして憲法13条により保障されるとしている。また、私法上の不法行為の成否等が問題となった場合において、「前科をみだりに公開されないという利益」「個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益」が法律上の保護に値する利益であるとし、「大学主催の講演会に参加を申し込んだ学生がその氏名、住所等を他者にみだりに開示されないことへの期待」は法的保護に値するから、上記情報は「プライバシーに係る情報」として法的保護の対象になると判断している。これらの最高裁判例は、私生活をみだりに公開されない権利を基調とし、自己情報コントロール権説を取り込んだ考え方を採用していると評される。
3 自己決定権
プライバシーの権利を自己情報コントロール権として捉えると、それ以外にプライバ
シー乃至私生活上の自由と考えられてきたもの、例えば、家族の在り方を決める自由
やライフスタイルを決める自由、生命の処分を決める自由など、個人の人格的生存に
かかわる重要な私的事項を公権力の介入・干渉なしに各自が決定できる自由は、情報
プライバシー権とは別個の憲法上の具体的権利と解されることになる。これが、いわ
ゆる自己決定権(人格的自律権)である。これは、情報プライバシー権と並んで広義の
プライバシーの権利を構成するものと解する。ただ、我が国では自己決定権を正面か
ら認めた判例は存在せず、別の観点から争われたにとどまる。
⑴最判平12年2月29日
本判例は、「輸血を伴う医療行為を拒否する」という「意思決定をする権利」は「人格権の一内容」として尊重されなければならないと判示し、医師の説明懈怠はこの権利を侵害する不法行為であるとした。これは、インフォームドコンセントを受ける権利という一種の自己決定権を認めたものとみることができる。
⑵最判平3年9月3日
私人間効力が問題となる事案。昭和女子大事件(最判昭49年7月19日)と同様、三菱樹脂事件判決(最大判昭48年12月12日)を憲法規定の私人間への直接適用・類推適用を否定する文脈において用いている(間接適用とされるものではない)。本判例により、昭和女子大事件が判示した包括的権能論は、学校一般に妥当することとなったと解される(昭和女子大事件では「大学は、国公立であると私立であるとを問わず」「包括的権能を有する」としており、大学における話に限定されていると読むことができた。また、国公立・私立を問わない点、射程範囲は広範であった。対して、最判平3年9月3日は、高等学校における事案である。)。
4 総括
本稿では、新しい人権についての基本的な前提知識を確認するとともに、新しい人権
の中でも特にプライバシー権及び自己決定権について重点を置き、各主要な判例を検
討することで最高裁の基本的な理解を考察した。1では、新しい人権を認める根拠で
ある憲法13条についての法的性格、幸福追求権の意味及び幸福追求権から導き出される人権を検討した。2では、まずプライバシー権の沿革と意味について検討し、それに関係する主要な判例を6つ挙げ最高裁の基本的理解を考察した。3では、自己決定権について2つの判例を挙げて紹介した。
参考文献
法律初学者におススメの判例学習の本は、
8.会社法【設立】④
こんばんは、marginal62です。
今回で会社法の設立分野のレジュメ化をいったん終えたいと思います。
(意外と長かった、、)
次回は、設立の分野に関する論点についてみていこうと考えてます。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
4 違法な設立・会社の不成立
⑴会社の不成立
会社の不成立とは、会社の設立が途中で挫折し、設立の登記まで至らなかった場合
をいう。
この場合、発起人は連帯して株式会社の設立に関してした行為について責任を負う
(無過失責任。56)。
⑵会社設立の無効
設立無効の訴えは設立登記から2年以内に(828Ⅰ①)、株主等(同Ⅱ①)のみが提起可
能(会社債権者は提訴権者に含まれていない。→債権者保護は53Ⅱで。)。
設立無効の判決が確定すると、その効力は第三者に対し(対世効)、将来に向かって
生じる(将来効)。
設立無効の訴えで、原告敗訴の場合、判決の効力は当事者間にしか及ばない(民事訴
訟法115Ⅰ)。
⑶無効事由
設立手続に重大な瑕疵がある場合。
EX.①定款の絶対的記載事項が欠けていたなど重大な瑕疵の存在
②設立時発行株式を1株も引き受けない発起人がいる場合
③公証人による定款の認証がない場合
④株式発行事項につき発起人全員の同意(32)がない場合
⑤設立に際して出資される財産の価格の最低限として定款に定められた金額
(27Ⅳ)に相当する出資がなされていない場合
⑥募集設立において創立総会が適法に開催されていない場合
⑦設立登記が無資格者の申請に基づくなどの理由で無効である場合
など
⑷会社の不存在
会社の不存在とは、会社の設立手続の瑕疵が甚だしく、そのことが外観上も明らか
な場合をいう。(狭く限られている)
5 設立に関する責任
設立に関する違法行為や不正行為につき、会社法は発起人等に罰則を定め、過料に
よる抑止を図っている。
⑴財産価格の填補責任
現物出資・財産引受けの、会社設立時を基準とする目的財産の価格が 定款に定め
た価格に著しく不足するとき、発起人・設立時取締役は会社に対して、連帯して、
その不足額を支払う責任を負う(不足額支払義務。52Ⅰ)。
ただし、発起設立の場合、①検査役の調査を得たとき、②当該発起人・設立時取締
役が無過失を証明したときは、これらの者は免責となる(同Ⅱ)。
募集設立の場合、設立時募集株式の引受人は自衛能力が十分でないため、②による
免責は認められない(103Ⅰ)。
⑵仮装の出資履行についての責任
株式匹人が出資の履行を仮装した場合、会社に対し所定の額の金銭を支払う義務を
負う(52の2Ⅱ・102のⅠ)。
出資の履行の仮装に関与した発起人も同額の金銭の支払い義務を負うが、注意を怠
らなかったことを証明すれば免責(52の2Ⅱ・103Ⅱ)。
両者の責任は、連帯責任。
⑶会社・第三者に対する責任
発起人・設立時取締役・設立時監査役は、その任務の懈怠から会社に生じた損害を
賠償する責任を負う(53Ⅰ)。
責任を免除するには、総株主の同意を要する(55)。
また、職務を行うについて悪意・重過失により第三者に生じた損害を賠償する責任
を負う(53Ⅱ)。(会社成立後の役員等が会社・第三者に負う賠償責任(423・429)に相
当)
⑷擬似発起人の責任
擬似発起人とは、募集設立において募集の広告その他募集に関する書面に創立委員
などとして自己の氏名及び会社の設立を賛助する旨を記載することを承諾した者を
いう。
この者は発起人ではないが、発起人とみなして会社法52~56・103ⅠⅡの責任を負
う(103Ⅳ)。
以上で、一通り設立分野のレジュメ化を終えました。
【次回】
会社法【設立】論点
7.会社法【設立】③
こんばんは、marginal62です。
今回は、会社法の設立の第三弾です。
ではさっそく。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
3 設立中の法律関係
⑴設立中の会社
設立中の会社の登記前はまだ権利能力を有しないため、発起人が会社の設立の過
程で取得し又は負担した権利義務は形式的には発起人に帰属し、会社が成立すれ
ば、発起人の権限内で行われた行為の効果はそのまま会社に帰属する。
権利能力なき社団である設立中の会社と成立後の会社が同一であるとする考え(同一
性説)から、発起人が会社設立のために取得し負担した権利義務は実質的には設立中
の会社に帰属しており、会社が成立すればそれらは会社に帰属する。
⑵発起人の権限
発起人が設立中の会社のためになす可能性のある行為は、①設立を直接の目的とす
る行為、②設立のために必要な行為、③財産引受け(または開業準備行為)、④事業
行為に大別される。
<①について>
①について発起人に権限があることに争いなし。
①→EX.定款作成、株式の引受け・払込みに関する行為、創立総会の招集など
<②について>
B→A社発起人。C→公証人。
認証手数料未払い。(赤✕)
CはA社に認証手数料を請求可能か?
②は定款認証手数料・印紙税、払込取扱機関に支払う手数料・報酬、検査役の報
酬、設立登記の登録免許税と、その他の設立費用に区別される。
前者は、条文上(28④括弧書など)明らか。
それ以外の設立のために必要な行為(設立費用)は、定款にその額の記載を要す
る。総額の(上限額)を定款に記載し、検査役の調査(33)を受けることが必要。
判例は設立費用につき、定款に記載された額の限度内において、発起人のした取引
の効果は成立後の会社に帰属し、相手方は会社に対してのみ支払を請求できるとす
る(発起人には請求できない。)。
<定款の設立費用の額の記載より実際の支出費用が多い場合の処理>
⇒A説ー判例を支持する学説
B説ー判例に批判的な学説
詳しくは割愛。
<③について>
DはA社の成立を条件に、成立後のA社が使用する予定の建物
の売買契約を締結。
DはA社に代金請求可能か?(財産引受け)
EはA社の成立を条件に、成立後のA社が使用する予定のマン
ション一室を賃貸する契約を締結。
EはA社に賃料請求できるか?(開業準備行為)
③財産引受けとは、会社の成立後に特定の財産を譲り受ける契約をいう。
これを行うには、財産の種類ごとにその価格・譲受人の氏名を定款に記載すること
が必要であり(28②)、原則として検査役調査(33)か価格の相当性につき弁護士等の
証明が必要。
定款に記載のない財産引受けは無効である(28柱書)。
<会社成立後に会社が追認できるか?>
⇒否定(判例)
対し、学説は会社に有利な取引であれば会社成立後の追認を認めることのほうが
会社の利益になり、会社の財産的基礎が害されないとの理由で、追認を肯定する
立場もある。
<取引後相当期間経過後に会社が無効主張できるか?>
⇒定款記載を欠く財産引受けを無効とした趣旨は、広く株主・会社債権者等の会社
の利害関係人を保護するものである。よって、本件譲受けは何人との関係におい
ても常に無効であり、会社が追認したとしても有効となるものではない。(判例)
会社は特段の事情がない限りいつでも無効主張できる。
しかし、特段の事情(契約後相当期間経過等)があれば、信義則に反し会社の無効
主張は許されない。
いわゆる開業準備行為とは、会社法に定めはなく、「会社が事業を始める準備とし
て行う行為」「会社が成立後すぐ事業を行えるように、土地・建物等を取得した
り、原材料の仕入れや製品の販売ルートを確立しておくなどの行為」をいう。
<開業準備行為につき、財産引受けに関する規定を類推適用すべきか?>
⇒財産引受けに関する法28・33をそれ以外の開業準備行為に類推適用することを
しない。(判例)
<④について>
B→A社発起人。F→旅行代理店会社。
BはA社成立前にFからチケットを購入。
FはA社に代金請求できるか?
④が成立後の会社に帰属しないことに争いなし。
社労士試験に向けて
買ってみました。
marginal62です。
私の学校にみえていた社会保険労務士の先生のお話は、普通に生活している人では聞けないものもあり、非常に興味深いもので、社労士の魅力をなんとなくですが感じたのを覚えております。
最近、具体的に目標となるものがなかったので、以前から気になっていた社会保険労務士の試験に挑戦してみようと思い、このテキストを買ってみました。(もちろん、これだけで合格するとは思ってませんよ?笑)全ページカラーで、難しそうな内容を簡潔に説明してくれております。労働法は集団及び個別双方学習したのでスッと頭に入ってきますが、社会保険分野は数字が出てくると、、、笑
しかし、素敵な資格であることは間違いないので、気を引き閉めて学習していきたいと思います。
資格試験の掟は、一発合格!
とはいえ、時間が限られていますので、効率よく学習を進めていけるように少し計画を立てます。
社会保険関係がメインになりそうです。
来年の試験に合格することを目標に。
今日からスタートです。
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アウトレットでお買い物
先日の北海道行きが急遽なくなったため、アウトレットへ買い物に出掛けました、marginal62です。
今回は日常系ブログを。
日頃はあまりお金を使わないのですが、安くなるとついつい買ってしまいますね、、
私も、今回の買い物で、
・ニット帽
・ズボン2着
・ナイキ上下セット(名前がわかりません。動きやすい感じの
やつです笑)
・ベルト
を購入しました。
皆さんは、もっと買われるのかな、
平日ということもあり、人が少なくゆっくりとまわることができました。
自宅まで一時間もあれば帰れる距離ですが、時間がありましたのであえて一泊して帰ることにしました笑
久しぶりにゆっくりと過ごせてリフレッシュできました。
次は、ダウンを買いに出掛ける予定です。
(季節的にもう少し先かな)
では。
6.会社法【設立】②
こんばんは、marginal62です。
久々の法律系記事の投稿です。(結局日付が変わってしまいました。)
今回は、前回の続き、会社法設立の募集設立の手続からです。
では、さっそく。
【目次】
1 総説
2 設立手続
⑴発起設立
⑵募集設立
3 設立中の法律関係
4 違法な設立・会社の不成立
5 設立に関する責任
2 設立手続
⑵募集設立
募集設立とは、発起人は設立時発行株式の一部を引き受け、残りについて発起人以
外の者による株式引き受けを募集する方法により行われる設立方法をいう(実務で
は稀にしか利用されない。)。
募集とは、株式の取得の申込みを勧誘することをいう(実務では、縁故者のみに勧
誘を行うことが一般。)。
設立時募集株式とは、募集に応じて設立時発行株式の引受けの申込みをした者に対
して割り当てられる設立時株式のことをいう。
発起人は、申込者の中から設立時募集株式の割当てを受ける者を定め、その者に割
り当てる設立時募集株式の数を定め、申込者に通知する(60)。
申込みと割当てにより設立時募集株式の引受けが確定する(62)。
(一連の手続は、会社成立後の新株発行とほぼ同様。)
①出資の履行
設立時募集株式の引受人は、発起人が定めた払込期日又は払込期間中に、引き受
けた株式につき全額の払込みをしなければならない。
払込みは、発起人の定めた払込取扱機関の払込取扱場所においてしなければなら
ない(63Ⅰ)。
引受人が払込期日(払込期間内)に当該払込みをしないときは、失権手続を得ずに
当然に払込みにより募集株式の株主となる権利(権利株)を失う(63Ⅲ)。
<権利株とは?>
⇒出資の履行をすることによって株主となる権利。
現物出資者が負う支払責任を履行できる資力の有無が不明では困るため、現物出
資は発起人のみ行うことができる。
払込取扱機関は払込金の保管証明の義務を負う(64)。
②創立総会
創立総会とは、設立時株主(出資の履行をした発起人及び払込を行った設立
時募集株式の引受人)の総会をいう。
発起人は、遅滞なく創立総会を招集しなければならない(65Ⅰ)。必要があれ
ば、臨時創立総会を招集することもできる(同Ⅱ)。
<権限は?>
⇒会社の設立に関する事項に限られる(66)。
発起人が定めた目的事項に限り決議できるが、例外として、定款の変更及
び会社設立の廃止については、議題として定められていなくても決議可能であ
る(73Ⅳ)。
【次回】
3から。
記事が遅れております(挨拶とTwitter)
深夜の投稿です。こんばんは、marginal62です。
最近、なかなか時間が取れず、法律系の記事が滞っております。
と言いますのも、喉に病気が見つかり、日によって体調が左右されている現状があります。
入院を勧められましたがなかなか難しいですよね。
先生には無理を言って薬と通院での治療にしていただきました。
何事にも言えることですが、やはり健康であることが物事の基礎をなしますね。体調が優れないと仕事も勉強もできませんし、、
これからしだいに秋の気候へと変化していくと思いますが、季節の変わり目はさらに気を付けないといけませんね。(私は秋が一番好きです。)
できれば、1日1投稿を考えていますがその他の予定との関係でできない場合もあるかと思います。(今のところできてないことの方が多いですが、、)
できる限り、毎日少しでも勉強し投稿していこうと思いますので、読んでいただけると非常に嬉しく思います。
Twitter(@marginal62_blog)で、投稿状況や日々の呟きをしております。
フォローしていただけると幸いです。
(フォローして頂いた方、ありがとうございます。
私もブログや呟き等拝見しております。)
今後とも本ブログを宜しくお願い致します。
北海道地震
北海道で地震がありましたね。
亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
怪我をされた方もたくさんいらっしゃって、大きな被害が出ていますね。
台風と相まって土砂崩れなどの被害に繋がったのでしょうか。
いずれにせよ、自然災害は予測困難で、被害を防ぐのは難しいようです。
今は、ソーラーパネルを使用した発電機など自然災害に備えたアイテムが豊富ですので、もしものために一台購入しておくと安心です。
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