marginal62の書籍レジュメ化ブログ

はじめまして、marginal62です。訪問いただきありがとうございます。ここでは、自分が読んだ書籍を自分なりにレジュメ化したものを掲載しております。専攻している法律系の書籍が中心となりますが、その他にも気になったものはレジュメ化していきます。レジュメ化する趣旨は、自身の学習の過程をついでに発信してしまおうというものです。これを見てくださった方の学習等にも役立ち、また、コメント等を通じて情報や意見の交換ができれば、なお嬉しいです。各種資格試験にも挑戦しております(法律系)。その経過も記事にしていきます。

民事執行保全法【不動産執行】

①現況調査とは、執行裁判所が差押えの効力を確認した後に現況調査命令を発することで、執行官が不動産の現況を調査することをいう(民事執行法(以下、法令名省略。)57条1項)。対象は、土地の場合、土地の所在地、形状、現況地目、境界、占有者と占有の状況など、建物の場合、建物の種類・構造・面積、占有者と占有の状況などである(民事執行規則(以下、単に規則とする。)29条1項)。執行官は現況調査の結果を現況調査報告書にまとめ、執行裁判所へ提出する。現況調査報告書は、その写しが一般の閲覧に供され買受希望者の重要な判断資料となるのみならず、評価人が評価の際に権利関係を判断し、書記官が売却条件を決定し、執行裁判所が売却基準価格を決定し、売却のための保全処分や不動産引渡命令を発令する際の、重要な判断資料の機能も有する。執行官は、買受希望者との関係で当該不動産の現況をできる限り正確に調査すべき義務を負う。調査・判断の過程が合理性を欠いたため現況調査報告書の記載内容と当該不動産の実際の状況との間に看過しがたい相違が生じた場合は、執行官はこの義務に違反したものとして、国は国家賠償法に基づく損害賠償責任を負う。

 ②不動産の評価とは、執行裁判所が現況調査命令と同時に評価命令を行うことにより、執行裁判所が選任した評価人が不動産を評価することをいう(58条1項)。評価人は、通常は不動産鑑定士から選任される。また、評価は不動産鑑定の手法が用いられ、評価人は評価書を作成し執行裁判所に提出する(規則30条)。評価書は、その写しが一般の閲覧に供され、買受希望者の重要な参考資料となることのほか、執行裁判所が売却基準価格を定める際の重要な資料となる。

 ③売却基準価格の決定は、評価人の評価に基づいて執行裁判所が決定する(60条1項)。ここで売却基準価格とは、不動産売却の額の基準となるべき価格である。売却基準価格制度の趣旨は、一般に財産的価値の高い不動産が不当に低い価格で売却され、債務者や債権者の利益が不当に害されることを防ぐとともに、目的不動産の参考価格を提示して、買受申出を希望する者が買受申出の額を決定する際の適切な指針を与える点にある。

 ④物件明細書とは、当該不動産に関する権利で買受人の引受となるものや、法定地上権などについての裁判所書記官の認識を記載した書面である。必要的記載事項として、不動産の表示、当該不動産に係る権利の取得と仮処分の執行で売却によりその効力を失わないもの、及び売却により設定されたとみなされる地上権の概要がある(62条1項)。占有者及び占有権限に関するもの、建物の敷地利用権に関するもの、及び区分所有建物の滞納管理費などは任意的記載事項とされる。また、物件明細書は買受人の意思決定のための判断資料の提供や引渡命令発令の可否についての判断資料の提供などの機能を有する。物件明細書は現況報告書と評価書とともに3点セットとされている。

 ⑤剰余主義の原則とは、不動産上に物権が存在する場合に、物権相互の優先順位、さらには物権が無担保債権に優先するという順位は、不動産強制競売においても尊重されるという原則である。強制競売において剰余主義の原則が問題になるのは、債権者が債務者の不動産を差し押さえた場合に、当該不動産上に債権者に優先する物権が存在する場合である。このとき、売却条件として当該物権を引受けとした場合(59条2項・4項)、優先する物権は売却により消滅せず買受人の下で存続するため、剰余主義に適合した結果となる。他方、消除とした場合は、無担保債権者が申立てた強制競売により担保物権が消滅するため、剰余主義に反する結果が生じる。そのため、このような場合に剰余主義を維持するための制度として無剰余措置がある(63条)。すなわち、売却代金から強制競売を開始させた債権者に優先する物権の権利者に完全な弁済をすることを要求し、弁済が可能となる額で当該不動産が売れない場合、売却自体をしないという措置をとる。

 ⑥売却のための保全処分は、差押えにより把握された不動産価値の減少を防ぐための差押え処分禁止効では防げない価値の減少を回避するための制度である。申立人は、差押債権者である。審理は密行性の要請から書面審理により行われると解される。要件としては、債務者または占有者が作為あるいは不作為により価格減少行為をすることである(55条1項)。価格減少行為とは、不動産の価格を減少させ、または減少させるおそれのある行為をいう。ただし、当該価格減少行為による不動産の価値の減少またはそのおそれの程度が軽微であるときは認められない(55条1項ただし書)。