marginal62の書籍レジュメ化ブログ

はじめまして、marginal62です。訪問いただきありがとうございます。ここでは、自分が読んだ書籍を自分なりにレジュメ化したものを掲載しております。専攻している法律系の書籍が中心となりますが、その他にも気になったものはレジュメ化していきます。レジュメ化する趣旨は、自身の学習の過程をついでに発信してしまおうというものです。これを見てくださった方の学習等にも役立ち、また、コメント等を通じて情報や意見の交換ができれば、なお嬉しいです。各種資格試験にも挑戦しております(法律系)。その経過も記事にしていきます。

【番外】破産法

こんにちは、marginal62です。

今回は、番外編として破産法から論文形式の記事の投稿です。

レジュメにはなってないかな、、

 

<各種概念の意義及び関連する解釈論>

第1 破産原因について

 破産原因については、すべての債務者に共通する破産手続開始原因として、破産法(以下、法令名省略。)15条1項で支払不能を挙げ、同条2項で、それを推定するための事情として支払停止を規定する。また、存立中の合名会社及び合資会社を除く法人につき、16条は、付加的な原因として債務超過を挙げ、さらに223条において、相続財産に関する唯一の原因として債務超過を規定する。信託財産については、支払不能及び債務超過が破産原因である(244条の3)。

1 支払不能・支払停止 

すべての債務者に共通する破産手続開始原因である支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう(2条11号)。ここで、「支払能力を欠く」とは、財産、信用、あるいは労務による収入のいずれをとっても、債務を支払う資力がないことを意味する(東京高昭和33年7月5日)。債務超過との違いとしては、財産はあるも、その換価が困難であれば支払不能となるし、財産はなくとも、信用や収入による弁済能力があれば支払不能にはならない点がある。また、弁済能力の欠乏は、一般的かつ継続的であることを要する。一般的とは、総債務の弁済について債務者の資力が不足しているということであり、継続的とは、一時的な手元不如意を排除する趣旨である。さらに、支払不能は客観的状態を意味する。なお、支払不能かどうかは、破産手続開始決定をなすべきか否かの裁判の時を基準時として決定される。

 支払停止とは、弁済能力の欠乏のために弁済期の到来した債務を一般的かつ継続的に弁済することのできない旨を外部に表示する債務者の行為をいう。この趣旨は、支払停止に基づく法律上の推定を設けることにより破産手続開始原因の証明を容易にすることである。

支払停止は、支払不能を推定させる事実であり(15条2項)、それ自体は破産手続開始原因ではない。代表的な行為として、不渡手形を生じさせること、明示的な表示として債権者に対する通知、黙示的な表示として夜逃げなどがある。

支払停止に関する問題としては、破産手続開始原因推定事実としての支払停止と、法160条1項2号などに基づく否認の要件としての支払停止、及び法71条1項3号などに基づく相殺禁止要件としての支払停止とが同一のものかというものがある。従来は両者同一のものと考えられていたが、有力説は、両者を区別し、前者は一定時点における債務者の行為、後者は破産手続開始まで継続する客観的支払不能を意味するとする。

 3 債務超過

 債務超過とは、債務額の総計が資産額の総計を超過している状態をいう。その判断にあたっては、期限未到来の債務も債務額の中に計上される。また、債務超過の判断の基礎となる資産の評価に関しては、清算価値を基準とすべきであるという見解と、継続事業価値を基準とすべきとの見解とが対立する。事業が継続している場合には、債務の弁済は事業収益からなされるため、継続事業価値を基準とし、清算手続に移行している場合には、弁済は資産の売却により行われるから、清算価値を基準として債務超過の判断をすべきである。

第2 破産能力について

 破産能力とは、破産手続開始決定を受けうる資格、すなわち債務者が破産者たりうる資格を意味する。これは、一般的資格として定められるものである点で、民事訴訟手続上の当事者能力と共通する。破産能力をいかなる者に認めるかについては、明文の規定がなく、一般には、民事訴訟法の当事者能力に関する規定に従って、個人、法人、及び法人でない社団等に破産能力が認められる(一般破産主義。13条、民事訴訟法28条・29条)。さらに、破産法上特別に破産能力が認められるものとして、相続財産及び信託財産がある。

 個人には、等しく破産能力が認められる。一度破産手続開始決定を受けた個人が手続中に死亡したときは、227条に基づいて相続財産に対する破産手続が続行される。

 法人の破産能力に対する伝統的な考え方は、法人を私法人と公法人に区別するものである。前者については、一般に破産能力を肯定するが、後者については、法人の事業の公益性を基準として、公益性の低いものについては破産能力を肯定し、公益性の高いものについては破産能力を否定する。しかし、国家や地方自治体など(本源的統治団体)については、清算の結果法人格が消滅することを法秩序上是認しえないから、破産能力が否定される。

第3 自由財産について

 破産財団に組み入れられない財産として、自由財産があるが、これは次の3種がある。①民事執行法その他の特別法にもとづく差押禁止債権、及び権利の性質上差押えの対象とならない財産(34条3項2号)、②民事執行法上の差押禁止金銭(民事執行法131条3号)の1.5倍相当額(99万円)の金銭(34条3項1号)、及び③自由財産を裁判所がさらに拡張したもの(34条4項)である。

ここで、慰謝料請求権につき判例は、慰謝料請求権は、それが行使上の一身専属権である限り、破産財団に帰属することはないが、一身専属性を失えば破産手続開始後に差押えが可能になったものとして(34条3項2号但書)、破産財団所属財産になるとする。一身専属性が失われるのは、慰謝料請求権の金額が客観的に確定した時であり、当事者間に金額の合意が成立した時又は債務名義が成立した時などがある。

また、一般論として法人に自由財産を認めるべきか。この点、法人は生活保護の必要がなく、破産が法人の解散事由とされているため、法人に自由財産を認めるべき根拠は薄弱であり、また、破産法人の自由財産を認めると、不公平な結果が生じる。本来、破産法人の財産は、破産債権者への配当財源となるものであるが、これを自由財産とすると、破産債権者ではなく社員などの残余財産分配請求権の対象となる。これは、実質的に破産債権者より社員などの権利を優先させるものであり、破産法の基本原理に反するため、認めるべきでない。

第4 破産債権について 

破産債権とは、破産者に対して破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないものをいい(2条5項)、破産配当を受領する地位の基礎となるものである。

破産債権の成立要件として、①財産上の請求権であること、②破産者に対するものであること、③強制的実現を求めることができること、及び④破産手続開始前の原因に基づくものであり、かつ、財団債権に該当しないものであることが挙げられる。①について、財産上の請求権は金銭債権に限定されず、評価により金銭債権に転化し得るものであればよい(103条2項1号イ)。

破産債権は、それぞれの権利がもつ実体法上の優先権を考慮して、①優先的破産債権、②一般の破産債権、③劣後的破産債権、④約定劣後破産債権の順に順位が付されている。

1 優先的破産債権

破産財団所属の財産について、一般の先取特権その他一般の優先権をもつ債権は、他の破産債権に優先する(98条1項)。また、特定財産上の優先権をもつ権利者は、破産手続外の権利行使によってその優先権を実現できる、別除権者とされる(65条1項)。優先的破産債権の基礎となるのは、民法その他の法律に基づく一般の先取特権及び企業担保権などである。ここで、従業員の労働債権については、平成15年改正によって、雇主の種類を問わず期間の限定なしに先取特権の保護対象とされることとなったため(民法306条2項)、その全額が優先的破産債権となる。優先的破産債権相互間の順位は、実体法の基準によって決まる(98条3項)。

2 劣後的破産債権 

一般の破産債権に後れるものは、劣後的破産債権と呼ばれる(99条1項)。これは、実際的には、その債権が破産配当から除外されることを意味する。また、劣後的破産債権者は、債権者集会における議決権も否定される(142条1項)。しかし、破産債権である以上、破産免責の効果を受ける(253条1項柱書本文)。劣後的破産債権に該当するものとしては、破産手続開始決定後の利息、破産手続開始決定後の不履行による損害賠償金・違約金、罰金等の請求権がある。

3 約定劣後破産債権

約定劣後破産債権とは、破産債権者と破産者との間において、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば、当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がなされた債権であり、法定の劣後的破産債権に後れる最後順位の破産債権である(99条2項)。債権者集会の議決権は否定される(142条1項)。

【参考文献】

・伊藤眞 破産法・民事再生法【第2版】 有斐閣 2009年

・佐藤鉄男ほか 民事手続法入門【第4版】 有斐閣 2013年