11.会社法【株式】②
こんばんは、marginal62です。
前回の続きからさっそく。
【目次】
1 株式と株主
2 株式の自由譲渡の原則と譲渡制限
3 株式の譲渡・担保化と権利行使の方法
4 特殊な株式保有の形態
5 投資単位の調整
2 株式の自由譲渡の原則と譲渡制限
株主はその有する株式を譲渡可能(127)。
また、投下資本の回収は株式の譲渡によるのが原則。
⑴定款による譲渡制限
会社によっては株主間の個人信頼関係を重視し、好ましくない者が株主になること
を排除したいというニーズがある(もって譲渡人以外の株主の利益を保護。)。
そこで、会社法は定款による株式の譲渡制限を認める(107Ⅰ①・108Ⅰ④)。
譲渡制限は非上場会社で広く行われる。
譲渡制限された株式を譲渡制限株式という。(そのまま)
<譲渡の承認機関は?>
⇒取締役会設置会社→取締役会
それ以外→株主総会
※定款で別段の定め
一定の場合には会社が株式の譲渡の承認をしたものとみなす旨定めることがで
きる(みなし承認規定)。
定款による株式の譲渡制限は、登記(株券発行会社では株券にも記載)する必要。
<登記がない場合の効果>
⇒善意の譲受人に対して譲渡制限の効果を対抗できない(908Ⅰ)。
(必要な株券の記載がない場合も同様)
<譲渡等承認請求>
⇒譲渡制限株式を譲渡する場合、株主は会社に対し当該譲渡を承認するか否かの決
定をすることを請求できる(136)。
当該請求をしないまま譲渡した場合、譲渡当事者間では譲渡は有効。
(会社との関係では効力を生じないため、会社は譲渡人を株主として取り扱う義務
がある。)
取得者が承認請求可能(137Ⅰ)。
136及び137の請求を併せて譲渡等承認請求という(138柱書)。
会社が譲渡を承認すれば、譲渡は会社との関係でも有効となる。
<承認なき株式譲渡が会社との関係でも有効になる場合>
⇒①一人会社の株主が譲渡する場合。
②譲渡人以外の全株主が譲渡に同意している場合。
(趣旨に反しない)
⑵契約による譲渡制限
EX.先買権条項
<⑴と⑵の譲渡制限の違い>
⇒⑴→株主総会の多数決でも決定可。
すなわち、反対する株主をも拘束し、定款による定めをした後に株式を取得
した者に対しても効力が及ぶ。
したがって、譲渡制限の内容はある程度法律で画一的に定める必要。
⑵→あくまで契約。
契約当事者間でしか拘束力が及ばない。
⑶法律の規定による譲渡制限
【次回】
会社法【株式】の3
これから、他の論文の作成です、、
それでは。
10.会社法【株式】①
こんばんは、marginal62です。
久々のレジュメ化記事の更新です(笑)
今回から会社法の株式の分野です。特に重要な事項は、株式有限責任の原則(104)・株主平等の原則(109Ⅰ)・株式譲渡自由の原則(127参照)・株主名簿・株式の共有ですかね。
では、さっそく。
【目次】
1 株式と株主
2 株式の自由譲渡の原則と譲渡制限
3 株式の譲渡・担保化と権利行使の方法
4 特殊な株式保有の形態
5 投資単位の調整
1 株式と株主
<株式とは?>
⇒株式会社の社員たる地位・資格(株主権)。
細分化された割合的単位の形をとる。
株式会社の社員=株主
<株主になるには?>
⇒①出資による方法
②他の株主からその保有株式を承継取得する方法
a 譲渡等によって当該株式を個別的に承継する場合
b 相続や合併などの一般承継の際、承継財産の一部として株式を取得する場合
⑴株主の権利
①自益権と共益権
<自益権とは?>
⇒株主が会社から経済的利益を受ける権利。
EX.剰余金の配当を受ける権利(105Ⅰ①・453)
残余財産の分配を受ける権利(105Ⅰ②・502)
※上記2つは定款で制限は可能なものの、我が国の株式会社が営利目的を想
定していること(の現れ)から、一切与えないということは許されない
(105Ⅱ)。もっともこれらの権利は抽象的権利であり、会社が剰余金の配当
や会社の解散を決定してはじめて具体的な請求権となる。
株式買取請求権
<共益権とは?>
⇒株主が会社の経営に参与し、あるいは会社の経営を監督・是正する権利。
EX.株主総会における議決権(105Ⅰ③・308)
株主総会における質問権(314)
提案権(303~305)
総会招集権(297)
各種訴訟提訴権
<単独株主権とは?>
⇒1株でも株式を保有する株主であれば行使できる権利。
EX.自益権
共益権(議決権・代表訴訟の提起権・差止請求権)
<少数株主権とは?>
⇒行使のため、一定数の議決権、又は総株主の議決権の一定割合の議決権若しく
は発行済株式の一定割合の株式を有することが必要な権利。
EX.共益権(株主総会招集権・役員の解任の訴えの提起権)
③株式買取請求権
<株式買取請求権とは?>
⇒一定の場合、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを株式会社に請求
できる権利。
①会社が株主の利益に重大な影響を及ぼす一定の行為を行う際、反対株主に認め
られる株式買取請求権、②単元未満株主の株式買取請求権(192以下)がある。
<反対株主とは?>
⇒当該総会に先立って当該行為に反対する旨を会社に通知し、かつ、当該総会に
おいて当該行為に反対の議決権を行使した株主。
⑵株主の義務・責任
株主はその有する株式の引受価格を限度として、それを超えあるいは会社債権者に
対して責任を負わない(株主有限責任の原則。104)
つまり、株主となった後は何ら義務を負わないのが原則。
⑶株主と債権者
<株主と債権者の違いは?>
⇒①権利内容の未確定性(債権者は契約により会社から受ける経済的利益の内容が決
まっているのに対し、株主は配当額についてあらかじめ決まっているわけではな
く、事後的に株主総会によって決まる。)
②劣後性(株主が会社から受ける権利は、債権者の権利に劣後する。EX.清算時)
③会社経営のコントロール(株主は会社の実質的所有者で会社経営を間接的にコン
トロールするが、債権者は経営にタッチしない。)
⑷株式の内容についての特別の定め
①譲渡制限(譲渡制限していない会社は公開会社。)
②取得請求権(当該株式について、株主が会社に対してその取得を請求する。)
③取得条項(一定の自由の発生を条件に、会社が株主から当該株式を取得できる定
め。)※株主に選択権なし。
<方法は?>
⇒株主総会の特別決議以上に厳格な決議(特殊決議)を要する。
具体的には、議決権を有する株主の半数以上であって、かつ、当該株主の議決権
の3分の2以上の賛成が必要(309Ⅲ①)。
また、反対株主には株式買取請求権が与えられる(116Ⅰ①)。
⑸種類株式
<種類株式とは?>
⇒内容の異なる2以上の種類の株式(108)
種類株式を発行する会社を、種類株式発行会社という。(そのまま)
<発行手続>
⇒発行する株式の内容について、定款で所定の事項を定める必要(108Ⅱ)
①剰余金の配当・残余財産の分配
配当優先株式の発行
②議決権制限
無議決権株式→議決権が制限される代わりに配当・残余財産の分配に関し優先さ
れることが多い(法律の要請ではない。)。
③譲渡制限
④取得請求権・取得条項
⑤全部取得条項
⑥拒否権
⑦クラス・ボーディング
A種株式とB種株式の2種類の株式を発行し、それぞれの種類株主総会で取締役を
2名ずつ選任する。
指名委員会等設置会社でない非公開会社に限り発行が認められる(108Ⅰただし
書)。
<種類株主総会とは?>
⇒ある種類の株式の種類株主を構成員とする会議体。
決議が定款の定めに基づいて行われる任意種類株主総会と、種類株主間の利害調整
のため、法律の規定に基づいて行われる法定種類株主総会とがある(321)。
⑹株主平等の原則(109Ⅰ)
株式会社は株主を、その有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければ
ならない。
取→取締役。X→Y社大株主
取締役が剰余金を配当しないことにしたため、Xが反対
そこでY社はXの支持を得るため、一定金額の支払を約束
し、Xの支持を得た。
その後、Y社が上記金額の支払を拒絶したため、X提訴。
Xの訴えが認められるなら、事実上Xにのみに配当が行われるに等しい。
そこで、当該約束は、株主平等原則に反し無効である。
<株主平等原則の限界>
⇒絶対のものではなく、合理的理由に基づく一定の区別は許される(有力)。
行政書士試験受験時代の軌跡
こんばんは、marginal62です。
今回は、私の行政書士試験の受験時代(大学生)のころの六法・テキスト・問題集を紹介です。
やりこんだ感が満載の六法です笑
条文はよく過去問に出ているものは大体覚えるくらいは引いていました。
わかっている条文でも、必ず引くようにしていました。
憲法の統治分野もほぼ条文からの出題だったので、同じように覚えるくらいまで条文は引きました。
色とかはあまり意味はありません笑
キーワードだと思う単語には丸をつけています。
こちらは、問題集です。
早稲田経営出版さんの合格革命シリーズの肢別過去問集を使っていました。
問題集はこれのみです。
何回繰り返したかはわかりませんが、途中から流れで答えがわかってしまうのでランダムにやったり、後ろから解いてみたりしてみました。
今でも大切にとってあります笑(今度捨てる)
こちらは、テキストです。
テキストは、伊藤塾さんが出している総合テキストです。これはぶっちゃけ二回も読んでません。読んでないところもあります。
資格試験用の予備校本あるあるですが、分かりやすくしすぎて逆に分かりにくいことがありますので、行政法についてはより詳しい(判例の事案までしっかり掲載された)基本書を使って勉強しました。
民法や憲法はこの総合テキストで十分でした。(これまでに基本書は一通り読んでいたので)
これは私が行政法を勉強するときに使っていた基本書(入門書)です。
判例学習の際には一度判例百選や基本書で事案から詳しく学習したほうが後々楽です。
因みに、商法・会社法は一切勉強しませんでした笑
5問あれば1問くらいは適当に選んでも当たりますし、合格できます。
しかし、行政書士の商法・会社法は基本的なものしかでませんので、得点源になると思います。
私は時間的に(戦略として)勉強しませんでした。
嫌いだからではありませんよ、、
では!
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憲法論文【営利的言論】
こんばんは、marginal62です。
なかなかレジュメ化ブログのほうが書けていません。(会社法あまり好きじゃない)
明日は、夜までオフなので、出すつもりでいます。
そんなこんなで、今回は、私が興味があって少し調べたものを論文式にしてみました。
テーマは憲法から、営利的言論についてです。
これについての判例は多くないため、アメリカの判例等を参考に書きました。
(ちなみにこれも未完のものです(笑))
「営利的言論」
~営利広告の自由の制限とその限界~
目次
はじめに
第1章 営利的言論の意義
第2章 我が国における営利的言論解釈の現状
第3章 営利的言論規制
第4章 合衆国最高裁判所における営利的言論法理
おわりに
はじめに
現在の我が国は、コンピューターや通信技術の発達により、情報がエネルギー乃至物質と同じような資源とみなされ、その価値を中心に機能・発展する情報社会である。また、一口に情報と言ってもその種類は様々であり、情報自体が商品として取引の対象となる(情報が商品化する)我が国ではしばしば問題を生ずる。[1]そこで、商品やサービスに関する情報(営利情報)に関しては他の情報と比較して、膨大な規制法令が設けられている。[2]特に営利的言論[3](以下本稿では適宜営利的言論、営利情報あるいは営利的表現の語を同じ意味で用いることにする。)は、他の言論より多くの制限を受けるものとされ、いわゆる営利的言論法理が長らく営利情報の地位を規定してきた。
しかし、今日、社会状況の変化は急激であり、ケーブルテレビやインターネットの普及、発展などといった営利的言論法理を支える様々な環境に大きな変化がみられる。このような状況の変化を前に、伝統的な新聞広告やビラを模範として、さらに価格や所在の伝達を想定して形成された営利的言論法理は、従来通りの有効性を維持できるとは考えにくい。
そこで、本稿では我が国における営利的言論の自由及びその規制を中心に、営利的言論における諸問題について、最高裁の判例をもとに考察していく。さらに、アメリカの合衆国最高裁判所判例をもとに営利的言論法理の展開を鳥瞰する。
第1章 営利的言論の意義
営利的言論については解決されていない問題がある。それは、そもそも「営利的言論」とは何かという問題である。先に述べたように営利的言論の定義付けは未だ成功していない。この点については営利的言論乃至営利的表現とは、「「純然たる」営利的表現であり、いわゆる「広告」である」と一般に解されている。[4]広告とは一般的には「商品類の販売、主義あるいは理念の広布、各種の会合や集会への参加の要請などを直接または間接に助長する意図で行われる告知のあらゆる形式」[5]を指すといわれているが、このような多岐にわたる広告のうち、営利的な目的をもって行われるものを「営利広告」乃至「商業広告」と一応総称することができる。よって、本稿では営利的言論を考えるにあたって、営利広告を検討していくことにする。
小括
本章では、(以下、略)
第2章 我が国における営利的言論解釈の現状
営利的言論に関して、我が国の最高裁が明示的に判断を示した事案は少ない。リーディングケースとしては昭和36年の、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年8月10日法律第145号。以下、本稿では単に薬事法と略す。)違反事件大法廷判決[6]が挙げられる。これについては、第3章にて検討する。ただ、最高裁判決の中には、営利的言論と政治的言論の区別に言及し、あるいはこの区別に黙示的に依拠した判断を下したものも存在する。
例えば、補足意見ではあるが、昭和62年大分県屋外広告物条例違反事件第3小法廷判決[7]において、伊藤正己裁判官は、本件条例が「政治的表現であると、営利的表現であると」を区別することなく、広告物一般を規制対象にしているが、もしそれが「思想や政治的な意見情報の伝達にかかる表現内容を主たる規制対象とするものであれば、憲法上厳格な基準によって審査され」ると述べており、営利的広告規制と政治的広告規制では異なった審査基準が用いられることを示唆している。
2 立法における営利的言論の区別
判例とは異なり、立法の場面での営利的言論は、極めて一般的な分類として様々な場面で用いられている。また、前述のとおり、営利広告規制は膨大な量があり、その規制方法も多様である。食品衛生法(昭和22年法律第233号)や薬事法における表示義務や制裁、あるいは不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)上の規制は、営利的言論という範疇を当然の前提にして構成されている。もちろん、法的規制以外にも膨大な業界の自主規制が敷かれている。もっとも、このような規制でも、自主規制の根拠が法定されている場合もある。[8]立法における特殊なものとしては、東京都屋外広告物条例において、あえて「非営利広告」という概念を用い、「国民の政治活動の自由その他国民の基本的人権を不当に侵害しないよう留意」していることが注目される。[9]したがって、立法の場面では、営利的言論とそれ以外の言論の区別は、一般化していると考えられる。
3 学説における営利的言論解釈
今日、我が国の指導的解釈は、営利的言論も表現の自由の一環であることを承認するが、その特性に鑑みて特殊な取り扱いが認められるという立場である。例えば、「学説では一般に表現の自由の保護に値すると考えられている。もっとも、表現の自由(日本国憲法 昭和21年11月3日公布 第21条1項。以下、単に憲法とする。)の重点は、自己統治の価値[10]にあるから、営利的言論の自由の保障の程度は、非営利的(すなわち政治的)言論の自由よりも低いと解される。」[11]、との主張がある。また、営利的言論が表現活動と経済活動の二面性を併用していることに営利広告特有の規制根拠を求める立場もある。[12]
他方、このような学説に対して、営利的言論と他の言論範疇を区別する根拠が十分に正当化されていないことを指摘し、営利的言論といえども他の言論範疇の規制におけるのと同様な法理が適用されるべきであるとする立場がある。[13]さらに、経済的活動と精神的自由権を区別する二重の基準[14]自体を排斥し、営利的言論を政治的言論より低価値だとする解釈を批判する立場もある。[15]この批判は、精神的自由権と経済的自由権の峻別に関わる二重の基準の根拠[16]を問い直すという影響を与えるが、営利的言論の処遇をめぐる議論は、司法審査の根幹に関連する問題にも波及するという重要性をもっている。
小括
本章では、(以下、略)
第3章 営利的言論規制
本章では、営利的言論を考察するにあたって、営利広告が憲法上どのように扱われるべきかを正面から扱った唯一の最高裁判決である最高裁昭和36年2月15日大法廷判決(刑集15巻2号347頁。)を検討する。
そもそも、営利広告として捉えられるものも、①特定の商品販売のための広告、商品知識の啓蒙を目的とする広告、無形の能力・技能の広告、書籍販売といった思想伝達の目的をも同時に有している広告などの「内容」による区別、②マスメディアの進歩にともなって伝達の「方法」としての音声・電波・印刷などによる区別、さらに、③伝達の「場所」としての道路広場などの公的場所、戸別訪問などによる区別があり、それらを、一般的乃至総括的に営利広告として法的に処理・規制することは不適当との指摘もある。[17]
本件事案は、このような広汎・複雑な「広告」の中の特殊な一事例である。
本判決は、あん摩師はり師きゅう師及び柔道整復師法(以下、単にあん摩師等法と呼ぶ。)7条が広告事項を施術者の氏名・住所・免許業務の種類等に限定していることにつき、「もしこれを無制限に許容するときは、」「虚偽誇大に流れ、一般大衆を惑わす虞があり、その結果適時適切な医療を受ける機会を失わせるような」結果をおそれたためで、「国民の保健衛生上の見地から、公共の福祉を維持するためやむをえない」として、是認したものである。これは、①本案が、営利広告に一般的な商品の販売広告ではなく、営業それ自体若しくは能力の広告に属するものであり、②本件で憲法判断の対象になった広告制限は、今日よくみられる虚偽誇大な広告の制限ではなく、「真実広告」の制限であり、③伝達の方法が、ビラによるものであるため、伝達方法、場所の点においても、局所的な一広告にすぎない。そこで、本件事案に対する先例的拘束性も、このような特殊性との関連においてのみ考慮されなければならないことになる。[18]7条の合憲を主張する多数意見は、「もしこれを無制限に許容するときは、虚偽誇大に流れ、一般大衆を惑わす虞」や「適切な医療を受ける機会を失わせる…おそれ」「国民の保健衛生上の見地」「公共の福祉の維持」の理由から、憲法21条に反しないとした。これは、虚偽誇大の虞を理由として、真実広告の禁止、さらには、真実広告の一類型たる適応症広告の禁止をも理由付けようとするものあり、真実広告・適応症広告制限の理由付けとしては不十分である。。この場合、一般的には、弁護士・医師などに対する広告制限の社会的根拠(職業倫理の問題)や、特定の薬品、例えば「がん」その他の特殊疾病に使用される薬品の広告制限(薬事法67条)や、避妊薬の一般的広告禁止、あるいは、煙草、酒の広告制限の事例を参考に、真実広告・適応症広告を制限する積極的理由が、取締上の便宜以外にあるのか否かを示すべきであった。また、特に本件の場合、薬事法66条の誇大広告制限とは異なり、真実広告をも制限する根拠を具体的に論証すべきであったように思われる。さらに、違憲判断を行った奥野少数意見の場合も、同法7条は、正当な適応症の広告を禁止しているとしか解釈しえないのか否かという法律解釈上の疑問があるが、真実広告・正当広告を禁止しうる事例がありうる点の考慮が必ずしも十分でないように思われる。すなわち、本事案において憲法上問題とされるべき、真実広告の制限に関しては、積極的に憲法判断を行った多数意見・奥野少数意見ともに十分に言及されていない。また、本判決では、同条の広告禁止を憲法21条の問題としなかった垂水補足意見にも注目すべきである。これは、アメリカの判例・学説上の「二種の基準」説[19]に根拠を置き、「営利広告」という総括的概念を法的判断基準となすものであるが、営利性の基準を法的基準として採用することは、理論的にも疑問が多く、判例法上にも、その価値を失っているとされる。[20]
公衆の保健・衛生に深い関わりあいをもつ可能性のある医療類似の業務について、職業選択の自由・営業の自由(憲法22条1項)[21]に対する権力的規制の一環として、特定の業種に従事する者に対して資格の制限を設け、さらに、虚偽または誇大な広告を禁止することは、合理的な法規制であるといえるが、虚偽・誇大に流れやすいからという広告のもつ本質を前提として、およそ業務内容に関する一切の広告を禁圧することは、疑問である。同じく公衆の保健・衛生に関連する医薬品の販売については、虚偽・誇大な広告のみを禁止している薬事法66条の規定に対して、著しく均衡を失しているといえる。
そこで、多数意見の論拠を支えている前提は、表面化はしていないが、①表現の一種であるとしても、営利広告は、一般の(政治)思想表現の自由と同等の憲法上の保障をうけないということか、②あん摩・はり・きゅう等の医業類似行為が、明治以来の西洋医学優位の歴史のもとで、法規範上、副次的・劣悪な承認しか受けていないのではないかということになるであろう。
憲法の規定が表現の自由に関しては、公共の福祉による制約を明示していないのに対し、経済的自由権については、それを明示していることから、前者は絶対的保障を、後者は相対的保障を意味するという学説がある。[22]垂水裁判官の補足意見は、端的に営利広告一般を表現ではなくむしろ経済的活動としてとらえ、かつ経済的自由権が表現の自由ほど強い保障を受けるものではないことを、アメリカの例を挙げて判示する。
アメリカでは、営利広告は表現の自由に含まれないとの判例がある。しかし、「営利的基準」[23]によって言論の内容を区別する立場に関しては、個々の事案によって非営利的なものと営利的なものとを明確に区別することは困難であり、この基準を採用した際は多くの言論が営利的であるとされ、合憲法的に規制されて表現の自由が狭くなるという見解がある。[24]そして、営利性の基準を法的基準として採用することは、理論的にも問題が多く、判例法のうえにもその価値を失っている。ことにニューヨーク州での中絶をあっせんする広告をめぐって争われた。この表現の自由の保障の強弱を、表現されるものの内容によって区別して考える「二種の基準」説は、ある種の言葉を他の言葉に対して優遇することとなり、総体的にみると表現の自由を狭くすることになるといえる。[25]広告は、たとえ営利的なものであったとしても、それが虚偽誇大にわたらぬかぎり、社会の知る権利[26]という見地からみて、これを表現の自由の中に含ませて保護することは、現代社会が必要とするところであり、取締りの便宜のために、事前・包括的に禁止することは、正当な広告の自由を奪うものである。広告が虚偽誇大になることを防止するためには、同業者の専門的知識による「相互監視」や、消費者の苦情、行政的取締りによって処理することが考えられる。
あん摩・はり師等の行う「医業類似行為」とは、「疾病の治療又は保健の目的をもって光熱器械・器具その他の物を使用、応用し、又は四肢もしくは精神作用を利用して施術する行為であって、医師等の資格を有する者が、その範囲内でする診療施術でないものをいう」(仙台高判昭和29年6月29日高裁刑特報36号85頁)とされている。そして、技能、技術方法又は経歴に関する広告は、夙に、明治44年内務省令10号按摩術営業取締規則、同年内務省令11号鍼術灸術営業取締規則による規制があり、昭和22年、昭和39年の「あん摩師等法」に受け継がれている。このような広告規制は、旧医療法69条と同様の方式ではあるが、医療法では、内科・外科等の診療科目の広告を認めているのに対し、あん摩師等法7条[27]は、あん摩師等がその業務又は施術に関し、方法の如何を問わず、同条1項各号に列挙する事項以外につき、広告を禁じ、広告可能な事項についても、上記の規制を設けており、厚生大臣の指定事項として「もみりようじ」等を広告しうるに過ぎない。[28]これは、戦後の士・師法の氾濫による特定業種の利益保護への志向と関連をもっているが、あん摩師等の教育・試験制度による近代化、医師と同様の職業倫理の確立が、国家法レベルで目的とされていながら、これらの職業集団の現実が明治以来の西洋医学優越の歴史の下で、経済・社会的に劣悪な状況にあり[29]、医業類似行為という捉え方の中にも、あん摩等は副次的なものといえる。最高裁はかつて、あん摩師等以外の無資格者による医業類似行為でも現実に人の生命・健康に有害でないものは自由に行いうると判示したが(最判昭和35年1月27日刑集14巻1号33頁)、これに対し同件では、一定の資格を得て灸を正業として行う者が、その灸の適応症を広告することができないという奇妙なことになる。したがって、7条は虚偽誇大な広告のみを禁止したものとして限定解釈すべきであったと考える。
小括
本章では、(以下、略)
第4章 合衆国最高裁判所における営利的言論法理
おわりに
参考文献
・長岡徹・メディア判例百選
・橋本基弘「営利的言論(1)(2・完)」法学新法103巻1号、6号
・橋本基弘「営利的言論法理の現在」法学新法112巻11=12号
・橋本基弘・憲法の争点(第3版)
・鵜飼信成『憲法』(岩波全書、1956年)
[1] 情報商材に関する判例として、東京地判平成20年10月16日先物取引裁判例集53巻352頁。
[2]①虚偽の広告の禁止につき、旧医療法69条6項、同71条5項、薬事法66条1項、金融先物取引法68条、訪問販売等に関する法律8条の2、宅地建物取引業法32条、旅行業法12条の8、食品衛生法12条。②誇大広告乃至誤解を招き易い広告の禁止につき、薬事法66条1項2項、金融先物取引法68条、訪問販売等に関する法律8条の2、宅地建物取引業法32条、旅行業法12条の8、不当景品類及び不当表示防止法4条、食品衛生法12条。③違法な行為や商品の広告の禁止につき、売春防止法5条3号、同6条3号、薬事法68条。
[3] 営利的言論(commercial speech)には、確立した定義は存在しないため、定義自体が問題となる。この点については、第1章で検討する。
[4] 松井茂記「営利的表現と政治的表現」法学教室113号28頁。
[8] 例として、旧景品表示法第10条。公正取引委員会の認定を受けて自主的に規約を作成するもので、自主規制という体裁はとっているものの、その内実は法規制とみなされる。
[9] 旧東京都屋外広告物条例第1条及び第5条の5参照。
[10] 表現の自由の価値としては、①個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという、個人的価値(自己実現の価値)、②言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという、民主政に資する社会的な価値(自己統治の価値)がある。
[11] 芦部信喜『憲法 第五版』(岩波書店、2011年)186頁。
[12] 橋本公亘『日本国憲法【改訂版】』(有斐閣、1988年)278~279頁。
[14] 二重の基準の理論とは、表現の自由を中心とする精神的自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規律する立法よりも、特に厳しい基準によって審査されなければならない、という理論である。
[15] 森村進『財産権の理論』(弘文堂、1995年)159~160頁。
[16] 二重の基準の理論根拠としては、①民主政の過程との関係、②裁判所の審査能力との関係が挙げられる。
[18] 石村善治・前掲39頁。
[21] 営業の自由においては、明文に定めはないが、判例上職業選択の自由に含まれて保障されている。
[24] 伊藤正己「言論・出版の自由」(岩波書店、1959年)198頁。
[25] 尾吹善人「言論の自由と営利目的」法律時報33巻5号17頁。
[26] 知る権利は、「国家からの自由」という伝統的自由権であると同時に、参政権(国家への自由)的役割をもつ。個人が様々な事実・意見を知ることで政治に有効に参加でき、自身の生活をより良くすることにも資する。
[27] あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)
第7条 あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。
一 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
二 第一条に規定する業務の種類
三 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
四 施術日又は施術時間
五 その他厚生労働大臣が指定する事項
2 前項第一号乃至第三号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。
[28] 「その他厚生労働大臣が指定する事項」(あん摩師等法7条1項5号)につき、広告しうる事項
一 もみりようじ
二 やいと、えつ
三 小児鍼
四 医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
五 予約に基づく施術の実施
六 休日又は夜間における施術の実施
七 駐車設備に関する事項
[29] 石村善治・前掲注17書39頁。
【憲法】東大ポポロ事件(最大判昭和38年5月22日)
こんばんは、marginal62です。
今回は、おもしろいものを見つけましたので載せてみました(笑)
以下の論文は、私が大学1年生になりたての頃のゼミの発表記事です。
法律を学び始めて数か月目の発表でしたが、予想通りのクオリティーです(笑)
そのままのっけておきました。
学問の自由と大学の自由-ポポロ事件
最高裁昭和38年5月22日大法廷判決
事実の概要
1952(昭和27)年2月20日、東京大学公認の学生団体「ポポロ劇団」が正式許可を得て、松川事件(※1)に取材した内容の演劇発表会を開催した。この発表会に警備情報収集のため、入場券を購入して私服で入場していた警察官数名が学生に発見され、捕えられた。この際、被告人学生は、他の学生とともに逃走しようとする警察官を逮捕し、服のボタンを引きちぎる等の暴行を加えたとして、暴力行為等処罰法Ⅰ条1項(六法P1541)違反で起訴された。警察官3名は、謝罪文を書かされ、警察手帳を取り上げられた後に解放された。奪われた手帳によると、複数の私服警察官が少なくとも1950年7月以降連日のように大学構内に入り、張り込み、尾行、盗聴等の方法により、学生、教職員、学内団体等の調査・情報収集を行っていた人か判明した。
語彙
※1 松川事件…1949年8月17日に発生した列車転覆事件。
共産党の仕業と考えられ、多数の党員等が逮捕起訴された。
POINT
被告の救済支援活動をはじめとして、学者・文化人・市民にまで至る国民的運動が広く展開し、判決そのものから裁判のあり方まで司法制度上の問題を追及する事件となった。
・学生運動…学生が集団的・組織的に行う社会的・政治的運動
・労働争議…労と使との間に発生する争議
・公安…政治的集団の観察やテロに対しての備えを行う
時代背景
戦後政治の転換期で発生した象徴的な事件であった。当時、極東では朝鮮戦争の進行、国内では占領体制から安保体制への転換などの政治情勢の下で、その動向に反対する運動が全国的に大学を拠点として拡がっていた。このような大学への警察内偵活動を阻止しようとした学生との衝突が頻出したが、この代表的事件が本件である。
論点
- 学生は大学の自治の主体となるか。
- 警察の介入は大学の自治を侵すことになるのか。
- 教授の自由が憲法上保障されるか。
- 大学の自治の内容をいかに解すべきか。
- 大学における学生の学問の自由の性格。
- 実社会の政治的社会的活動に当たる行為は憲法23条によって保障されるか。
判旨
①・②
(前提として学問の自由と大学の自治を享有する主体は教授その他の研究者であり、学生はそれらの自由と自治の効果として学問の自由と施設の利用が認められているにすぎないとして)大学における学生の集会もその範囲において自由と自治を認められるにすぎず、「実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない」ので、「本件の集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を犯すものではない」。
③
憲法23条の学問の自由は、広くすべての国民に対して学問研究の自由とその研究結果の発表の自由を保障するとともに、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨とする。よって、教育ないし教授の自由は、学問の自由と密接な関係を有するけれども、必ずしもこれにふくまれるものではない。しかし、大学については、憲法の趣旨と学校教育法52条により、教授その他の研究者がその専門の研究の結果を教授する自由が保障される。
④
大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。この自治は、特に大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断によって選任される。また、大学の施設と学生の管理についてもある程度で認められ、これらについてある程度で大学に自主的な秩序維持の機能が認められている。
⑤
もとより、憲法23条の学問の自由は、学生も一般の国民と同じように享有する。しかし、大学の学生として一般の国民以上に学問の自由を享有し、施設を利用できるのは、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである。
⑥
大学における学生の集会も、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない。
また、その集会が特に一般の公衆の入場を許す場合には、むしろ公開の集会又はこれに準ずるものというべきである。本件集会は、真に学問的な研究と発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準ずるものであって、大学の学問の自由と自治は、享有しない。したがって、本件の集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を侵すものではない。
結論
この最高裁大法廷判決は、憲法23条の学問の自由の意味、そこで保障される大学の自治の構造等の諸問題を最高裁として初めて本格的に検討し、その後の学説と実務に大きな影響を及ぼしている。その後の学説と実務の展開もふまえて言うならば、そこには以下のような注目に値する論点が含まれている。
Ⅰとくに大学における学問の自由の保障
本件大法廷判決は、憲法23条が、学問の自由をすべての国民に保障するとともに、とくに学術研究の中心である大学における学問の自由を保障しようとするものだとする。なにが真理・真実であるかにかかわる学問活動には、多数決でことを決する政治は介入すべきでないとする公理を憲法23条の基礎に読み取るならば、大学の中と外で学問の自由の保障の仕方が質的に異なるはずがないし、大学と下級教育機関で学問の自由の保障の程度に質的な差異が出てくるはずもない。研究・教育機関一般について考慮されるべきであろう。その後の学説においては、この点について再検討を求める強い動向がみられる。
Ⅱ学問の自由と教育(教授)の自由
本件大法廷判決は、大学における教授の十裕を別として、学問の自由には含まれないとする。しかしⅠⅠで指摘しておいた公理をふまえるならば、この点についても再検討すべき大きな余地がある。「教科書裁判」とのかかわりもあって、学界ではこれを批判的に検討する動きが強く、また、実務でも下級教育機関の教師の教育の自由を認める「杉本判決」も出ている。最高裁も「学テ判決」では、普通教育の教師に、完全な教育の自由はないとしながらも、一定の範囲内で教育の自由が認められるとしている。なお、その後の学説・実務のいずれかにおいても、教育の自由の根拠が憲法23条のみに求められているわけではないことに留意すべきであろう。
Ⅲ大学における学生の自由と自治
本件大法廷判決は、第一審判決と大きく異なり、
大学における学生の自由と自治を、教授その他の研究者の「自由と自治の効果」にすぎないとしている。大学=営造物論、学生=営造物使用者論である。その結果、学生は大学の自治の担い手とも解されていない。しかし、これに対しては学説上の批判がとくに強く、本件大法廷判決後にもその批判をふまえた判決がみられる。「学生は、大学における不可欠の構成員として、学問を学び、教育を受けるものとして、その学園の環境や条件の保持及びその改変に重大な利害関係を有する以上、大学自治の運営について要望し、批判し、あるいは反対する当然の権利を有す」。確かに、学説上も、学生が大学の管理運営にどこまで参加できるかについては一致をみないが、学生の自由と自治に直接かかわる領域については参加が特に考慮されるべきであろう。
Ⅳ警察と大学と学生
本件大法廷判決は第一審判決と異なって、学生の学内集会が政治性をもち、公開のものである場合には、直ちに大学の自治の保障外としている。加えて、それらの点についての第一次的判断権さえも大学から奪ってしまっている。政治的な活動であるか否か、教育的にみて必要な活動であるか否かの判断権を大学から大きく奪ってしまっている。大学における研究・教育・学習の活動が警察官のたえまなき監視の下におかれ、本件第一審判決がいうように「警察国家的治安」状態をもたらしかねない。しかし、本件の、1・2審判決やこの解説のⅠを前提とすれば、学生が、自治の主体であると否とにかかわらず、大学における自由や自治を侵害する行為を阻止することは、当然に認められているはずである。正当防衛は、被侵害者に限定されないからである。
この判例では当時の価値観と時代背景を考慮し、考えていかなければならない。この事件の2か月後に日本はGHQ(アメリカ)からの独立を果たす。その中の政治情勢にあって反対運動が全国展開していた時の代表的な判例であり、現在も大学の自治についての判例として挙げられている。
ポポロ事件については、学生による一方的な暴力行為である反面、大学内活動警察権力の監視と査察の下に置かれることを是認するには、学問の自由、大学の自治の持つ国法上の価値は余りにも貴重であった。この事件を機に大学の自治能力の反省と変化が起こり始めたと考える。しかし、今日の大学人は特権にふさわしい自学と責務と努力をしておらず、歴史として忘れ去られている感じが否めない。
更に今日では、むしろ社会や国民に「開かれた大学」としての自治や改革のあり方が問われており、学生運動も下火が続いている状態である。だが、最近も京大で公安の捜査官が学生に捉えられるなど、警察と学生(保守派と革命派)の対立は続いているのである。
参考文献
イラスト http://consti.web.fc2.com/8shou3.html
竹内俊子
別冊ジュリスト 学問の自由と学生の自治 杉原康雄
別冊ジュリスト 学問の自由と大学の自治 佐藤 司
大学の自治と警察権の発動 谷村唯一郎
Jurist増刊 学問の自由と大学の自治 戸波江二
Jurist増刊 教育の自由 内野正幸
判例時報 東京劇団ポポロ事件に関する大法廷判決
日本評論新社
懐かしい勉強の軌跡
ふと、本棚を探っていたときに懐かしいものを見つけました、marginal62です。
これらは、私が大学に入りたてホヤホヤのときに勉強した、行政書士の民法をまとめたものです。
おそらく、テキストをまとめたのだと思います。
が、そもそも資格試験のテキストは既にまとまりきっているものが大半なので、ほとんど丸写しになったはず笑
テキストだと持ち運びに不便だし、かといって本を切ることに抵抗があったため、どこでも勉強できるようにまとめていました。
なので、大半は汚れていたりボロついたものでした(載せた画像のものは綺麗なやつです。笑)。
自分でまとめるとビジュアルで思い出せたりするので、私は今でもこのようにまとめることが多いです。
因みに、現在勉強している労働安全衛生法をまとめたものが↓
最初はわかりきっている基本的なこともしっかり確認することが大切ですね。
後々時間がなくなってくるとできなくなりますし、司法試験や予備試験だと基本的な事項(趣旨)から考えて論述していくので、難しい試験ほど基本は大切だと感じます。
私のブログもこれが原点なのかな、、笑
固すぎるブログになるのも嫌なので、ちょくちょく違うテイストの記事も書いていきますね。
ほのぼのしたい
こんばんは、marginal62です。
ふと、ほのぼのしたいと思い買ってみました。
深町なかさんの画集。
絵が好きです。
- 作者: 深町なか
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【番外】破産法②
おはようございます、marginal62です。
今回は、昨日に引き続き番外編②ということで、同じく破産法から論文形式の記事です。
<破産手続開始決定の効果について>
破産手続開始の効果として中心は、破産者からの財産管理処分権の剥奪と破産管財人への専属(破産法(以下、法令名省略。)78条1項)、及び破産債権者の個別的権利行使の禁止(100条1項)である。以下、法人に対する効果と自然人に対する効果をそれぞれ説明する。
1 法人及び自然人に共通の破産手続開始の効果
両者に共通するものとして、説明義務及び重要財産開示義務がある。
説明義務は、破産者の財産の内容や所在、破産に至った経緯などに関する情報を提供させ、破産管財人の管財事務遂行の資料とし、また破産債権者が管財事務に対する監督を行うための資料を提供させるためのものである。
さらに、破産者は、破産手続開始後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない(重要財産開示義務。41条)。これは、破産管財人などからの求めの有無にかかわらず、裁判所に対し定型的に重要財産に関する書面による開示義務を課した点に特徴がある。
これら2つは、それぞれ義務違反があれば、破産犯罪(268条1項2項、269条)となり、また免責不許可事由ともされる(252条1項11号)。
2 法人に対する破産手続開始の効果
法人に対して破産手続開始決定がなされると一般法人法や会社法の規定に基づき法人は解散する。しかし、通常とは異なり解散に引き続いての清算手続はなされず、破産管財人による清算がこれに代わる。ただし、破産手続開始後であっても、破産法人の法人格は、破産の目的の範囲内でなお存続するものとみなされる(35条)。なぜなら、破産法人の財産管理処分権は破産管財人に専属するが(78条1項)、あくまで財産の帰属主体は破産法人であり、破産清算が完了するまでその法人格を存続させる必要があるためである。破産手続が進行し、配当が行われ、220条2項に基づいて破産手続終結決定の公告がなされると、その時点で破産法人の法人格は消滅する。
3 自然人に対する破産手続開始の効果
(1)居住制限
破産者の所在把握のため、破産者は申立てに基づいて裁判所の許可なくその居住地を離れることができない(37条1項)。申立て却下に対する不服申立てとして、即時抗告が認められる(37条2項)。また、これに違反すれば、免責不許可事由となる(252条1項11号)。なお、破産者に準じる者(法人の理事など)にも居住制限が課される。
⑵引致
破産者が説明義務を尽くさないなど必要があると認めるときは、裁判所は引致状を発して、破産者の引致を命ずることができる(38条1項3項)。引致には、刑事訴訟法及び刑事訴訟規則中の勾引に関する規定が準用される(38条5項)。引致を命ずる決定に対しては、破産者又は債務者は即時抗告によって不服を申し立てることができる(38条4項)。なお、破産者に準じる者(法定代理人など)についても引致が可能である。
⑶通信の秘密制限
破産管財人が破産者の財産状態や取引関係を把握するために必要があると認めるときは、裁判所は、破産者宛の郵便物や信書便物を破産管財人に配達するように信書送達事業者に嘱託することができ(81条1項)、破産管財人は受け取った郵便物等を自ら開封し読むことができる(82条1項)。これは、憲法21条2項により保障された通信の秘密に合理的制限を加えたものである。
また、破産者は破産管財人へ配達嘱託の取り消しを求めることができる。裁判所は破産管財人の意見を聴取したうえ、取り消すこともできる。変更も同様であり、取消や変更は、裁判所の職権で行われることもある(81条2項)。
破産手続が終了したときは、裁判所は配達嘱託を取り消さなければならない(81条3項)。
破産者は、破産管財人に配達された郵便物等の閲覧請求ができ、破産財団に関しない郵便物等の交付を求めることができる(82条2項)。
なお、不服申立てとして、破産者又は破産管財人は即時抗告ができるが、即時抗告には執行停止の効力はない(81条5項)。
⑷資格制限
弁護士、公認会計士、後見人などの公法上あるいは私法上の資格を有する者が破産手
続開始決定を受け、未だ復権していないときは、それぞれの資格をうることはできない
し、また、現に有している資格は失う。
株式会社の取締役については、現に取締役である者が破産手続開始決定を受けた場合、会社法330条により会社と取締役との関係が委任とされていることから、民法653条2号の規定によって取締役を退任しなければならない。
また、破産手続開始決定を受けた者を新たに取締役に選任できるかについては、会社法制定後は規定が存在しないことから、株主総会の判断に委ねている。
【参考文献】
・佐藤鉄男ほか 民事手続法入門【第4版】 有斐閣 2013年
【番外】破産法
こんにちは、marginal62です。
今回は、番外編として破産法から論文形式の記事の投稿です。
レジュメにはなってないかな、、
<各種概念の意義及び関連する解釈論>
第1 破産原因について
破産原因については、すべての債務者に共通する破産手続開始原因として、破産法(以下、法令名省略。)15条1項で支払不能を挙げ、同条2項で、それを推定するための事情として支払停止を規定する。また、存立中の合名会社及び合資会社を除く法人につき、16条は、付加的な原因として債務超過を挙げ、さらに223条において、相続財産に関する唯一の原因として債務超過を規定する。信託財産については、支払不能及び債務超過が破産原因である(244条の3)。
1 支払不能・支払停止
すべての債務者に共通する破産手続開始原因である支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう(2条11号)。ここで、「支払能力を欠く」とは、財産、信用、あるいは労務による収入のいずれをとっても、債務を支払う資力がないことを意味する(東京高昭和33年7月5日)。債務超過との違いとしては、財産はあるも、その換価が困難であれば支払不能となるし、財産はなくとも、信用や収入による弁済能力があれば支払不能にはならない点がある。また、弁済能力の欠乏は、一般的かつ継続的であることを要する。一般的とは、総債務の弁済について債務者の資力が不足しているということであり、継続的とは、一時的な手元不如意を排除する趣旨である。さらに、支払不能は客観的状態を意味する。なお、支払不能かどうかは、破産手続開始決定をなすべきか否かの裁判の時を基準時として決定される。
支払停止とは、弁済能力の欠乏のために弁済期の到来した債務を一般的かつ継続的に弁済することのできない旨を外部に表示する債務者の行為をいう。この趣旨は、支払停止に基づく法律上の推定を設けることにより破産手続開始原因の証明を容易にすることである。
支払停止は、支払不能を推定させる事実であり(15条2項)、それ自体は破産手続開始原因ではない。代表的な行為として、不渡手形を生じさせること、明示的な表示として債権者に対する通知、黙示的な表示として夜逃げなどがある。
支払停止に関する問題としては、破産手続開始原因推定事実としての支払停止と、法160条1項2号などに基づく否認の要件としての支払停止、及び法71条1項3号などに基づく相殺禁止要件としての支払停止とが同一のものかというものがある。従来は両者同一のものと考えられていたが、有力説は、両者を区別し、前者は一定時点における債務者の行為、後者は破産手続開始まで継続する客観的支払不能を意味するとする。
3 債務超過
債務超過とは、債務額の総計が資産額の総計を超過している状態をいう。その判断にあたっては、期限未到来の債務も債務額の中に計上される。また、債務超過の判断の基礎となる資産の評価に関しては、清算価値を基準とすべきであるという見解と、継続事業価値を基準とすべきとの見解とが対立する。事業が継続している場合には、債務の弁済は事業収益からなされるため、継続事業価値を基準とし、清算手続に移行している場合には、弁済は資産の売却により行われるから、清算価値を基準として債務超過の判断をすべきである。
第2 破産能力について
破産能力とは、破産手続開始決定を受けうる資格、すなわち債務者が破産者たりうる資格を意味する。これは、一般的資格として定められるものである点で、民事訴訟手続上の当事者能力と共通する。破産能力をいかなる者に認めるかについては、明文の規定がなく、一般には、民事訴訟法の当事者能力に関する規定に従って、個人、法人、及び法人でない社団等に破産能力が認められる(一般破産主義。13条、民事訴訟法28条・29条)。さらに、破産法上特別に破産能力が認められるものとして、相続財産及び信託財産がある。
個人には、等しく破産能力が認められる。一度破産手続開始決定を受けた個人が手続中に死亡したときは、227条に基づいて相続財産に対する破産手続が続行される。
法人の破産能力に対する伝統的な考え方は、法人を私法人と公法人に区別するものである。前者については、一般に破産能力を肯定するが、後者については、法人の事業の公益性を基準として、公益性の低いものについては破産能力を肯定し、公益性の高いものについては破産能力を否定する。しかし、国家や地方自治体など(本源的統治団体)については、清算の結果法人格が消滅することを法秩序上是認しえないから、破産能力が否定される。
第3 自由財産について
破産財団に組み入れられない財産として、自由財産があるが、これは次の3種がある。①民事執行法その他の特別法にもとづく差押禁止債権、及び権利の性質上差押えの対象とならない財産(34条3項2号)、②民事執行法上の差押禁止金銭(民事執行法131条3号)の1.5倍相当額(99万円)の金銭(34条3項1号)、及び③自由財産を裁判所がさらに拡張したもの(34条4項)である。
ここで、慰謝料請求権につき判例は、慰謝料請求権は、それが行使上の一身専属権である限り、破産財団に帰属することはないが、一身専属性を失えば破産手続開始後に差押えが可能になったものとして(34条3項2号但書)、破産財団所属財産になるとする。一身専属性が失われるのは、慰謝料請求権の金額が客観的に確定した時であり、当事者間に金額の合意が成立した時又は債務名義が成立した時などがある。
また、一般論として法人に自由財産を認めるべきか。この点、法人は生活保護の必要がなく、破産が法人の解散事由とされているため、法人に自由財産を認めるべき根拠は薄弱であり、また、破産法人の自由財産を認めると、不公平な結果が生じる。本来、破産法人の財産は、破産債権者への配当財源となるものであるが、これを自由財産とすると、破産債権者ではなく社員などの残余財産分配請求権の対象となる。これは、実質的に破産債権者より社員などの権利を優先させるものであり、破産法の基本原理に反するため、認めるべきでない。
第4 破産債権について
破産債権とは、破産者に対して破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないものをいい(2条5項)、破産配当を受領する地位の基礎となるものである。
破産債権の成立要件として、①財産上の請求権であること、②破産者に対するものであること、③強制的実現を求めることができること、及び④破産手続開始前の原因に基づくものであり、かつ、財団債権に該当しないものであることが挙げられる。①について、財産上の請求権は金銭債権に限定されず、評価により金銭債権に転化し得るものであればよい(103条2項1号イ)。
破産債権は、それぞれの権利がもつ実体法上の優先権を考慮して、①優先的破産債権、②一般の破産債権、③劣後的破産債権、④約定劣後破産債権の順に順位が付されている。
1 優先的破産債権
破産財団所属の財産について、一般の先取特権その他一般の優先権をもつ債権は、他の破産債権に優先する(98条1項)。また、特定財産上の優先権をもつ権利者は、破産手続外の権利行使によってその優先権を実現できる、別除権者とされる(65条1項)。優先的破産債権の基礎となるのは、民法その他の法律に基づく一般の先取特権及び企業担保権などである。ここで、従業員の労働債権については、平成15年改正によって、雇主の種類を問わず期間の限定なしに先取特権の保護対象とされることとなったため(民法306条2項)、その全額が優先的破産債権となる。優先的破産債権相互間の順位は、実体法の基準によって決まる(98条3項)。
2 劣後的破産債権
一般の破産債権に後れるものは、劣後的破産債権と呼ばれる(99条1項)。これは、実際的には、その債権が破産配当から除外されることを意味する。また、劣後的破産債権者は、債権者集会における議決権も否定される(142条1項)。しかし、破産債権である以上、破産免責の効果を受ける(253条1項柱書本文)。劣後的破産債権に該当するものとしては、破産手続開始決定後の利息、破産手続開始決定後の不履行による損害賠償金・違約金、罰金等の請求権がある。
3 約定劣後破産債権
約定劣後破産債権とは、破産債権者と破産者との間において、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば、当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がなされた債権であり、法定の劣後的破産債権に後れる最後順位の破産債権である(99条2項)。債権者集会の議決権は否定される(142条1項)。
【参考文献】
・佐藤鉄男ほか 民事手続法入門【第4版】 有斐閣 2013年